鈍考急考39 精神科病院の虐待事件を軽く見るな 原 昌平 (ジャーナリスト)


精神科病院には、人権侵害が起きやすい理由がある。
 @強制入院、隔離、拘束、外出・面会・電話の制限などが法律で認められている。
 A日常生活のルールを含めてスタッフの権力が大きい。
 B看護職員は個別のケアより集団管理を重視しがち。
 C病棟の多くが閉鎖的で、外部の目が入りにくい。
 D病院の大半が民間で、営利優先に傾くことがある。
 E医師、看護職員の配置が少なく、人手が足りない。
 入院患者の側にも、虐待を受けやすい状況がある。
 F訴える力が弱い。病状や薬の影響で意欲の低下している人、論理的主張の難しい人、言葉の出ない人もいる。
 G逆らわない方が賢いことを学ぶ。入院が長引くほど無力感、あきらめが強まる。
 H支援者が乏しい。家族も味方とは限らない。
 社会や行政の問題もある。
 I他に行き場がない。退院を支える福祉や住宅の不十分さ、身体合併症のある患者を受け入れる病院の不足。
 J医療行政の監督の甘さ。
 K入院させておけば手間がかからなくてよいと考える生活保護行政の姿勢。
https://healthnet.jp/paper/paper-41903/paper-43093/paper-43142/