>>461
有識者層と寡頭支配層の多くは、貧困の拡大、社会的格差の固定化、階級間の対立といった経済停滞の影響に対処しようとはせず、幅広い人びとのための経済成長よりも「持続可能性」の理想を追求している。中世の聖職者が物質主義に異を唱えたように、今日の学界やメディアで活躍するインテリたち、さらには企業エリートの一部も、ダイナミックな経済、イノベーション精神、日常生活の改善への取り組みといった考え方それ自体に懐疑的な目を向けている。「進歩は神話だ」という声すらある。このように、有識者たちのあいだでは、社会的上昇はもはや過去の遺風であり、いま私たちがなすべきは、富と機会を拡大する方法の探求ではなく、社会的不満の解消や環境保護くらいのものだという悲観的な思いが強まっている。(前掲書第3章)