北九州市の武内和久市長が市議会(定数57)に対して強気の姿勢を見せている。特に最大会派の自民市議団(16人)とは、次期衆院選福岡9、10区で自民党の公認候補選考から漏れ、無所属で出馬しようとしている市議2人の支持を表明したことなどであつれきが生じている。強気の背景には、自民重鎮の麻生太郎副総裁の存在もちらつくが、市政運営で主導権を握ろうとしているとの見方が出ている。

 「人として、政治家として、北九州市を前に進めていきたいという強い志に共感している」

 11月下旬、武内市長は記者団に対し、次期衆院選で9区は三原朝利市議を、10区は大石仁人市議を支持する理由をそう語った。2市議は自民所属だ。しかし、自民は9区を「空席」として候補予定者を選ばず、10区は吉村悠県議を選んでおり、選考から漏れた2市議が無所属で出馬しようとしていることに反発がある。一方、現職として9区は元旧民主党で無所属の緒方林太郎氏、10区には立憲民主党の城井崇氏がいる。

 武内市長は、自民の意に沿わない2市議への支持を鮮明にしたことについて「誰かを応戦すると誰かを向こうに回すのは選挙につきもの。自民と相いれないという意味では全くない」と語る。ただ、2市議は今年2月の市長選で自民の決定に反し、無所属で出馬した武内市長を支援。武内市長は与野党相乗りの自民系候補を破り、「武内旋風」を巻き起こして初当選した。2市議は同じ政治理念を持った「盟友」といえる。

 自民内には不満が募る。特に10区は大石氏が無所属で出馬すれば保守分裂となり、武内市長と自民の対決は避けられず、城井氏に漁夫の利を与えかねない。自民関係者は「市長選のしこりが尾を引いているのは間違いない」と話す。


 一方、市長選で自民と同じ候補を推薦した市議会第3会派の旧民主系「ハートフル北九州」(11人)は蚊帳の外に置かれた形となっている。同会派の市議は「俺らは与党じゃないから無視されている」とこぼす。

 武内市長と市議会のあつれきは次期衆院選を巡る対応に限らない。自民市議団が10月30日午後に予定していた市長への来年度予算要望。各会派が市長に直接会って要望する毎年恒例のものだが、当日の午前中に秘書室から市議団に「急な業務で市長が対応できなくなった」と連絡がありキャンセルされた。ハートフル北九州も面会時間を複数回変更され、一時は両会派から「議会軽視だ」「今までこのようなことは一度もなかった」と批判の声が上がった。

 どうして武内市長は強気に出られるのか。12月定例市議会の一般質問。ある市議が「次期衆院選で特定の政治家の応援を表明することで、国とのパイプが細くなるのではないか」とけん制しても、武内市長は「官僚時代に培った人脈があり、(彼らが)各省庁の幹部になっている」と自信ありげに答弁した。武内市長は東大法学部卒で厚生労働省出身。関係者は「電話1本で動いてくれる人が霞ケ関の中枢にたくさんいる」と語る。

 さらに、武内市長は2019年の県知事選で自民の推薦を受けていながら落選した。逆に、市長選では政党の支援を受けず、政策に共鳴した2市議らの応援を受けて初当選している。県知事選で武内市長擁立を主導した麻生氏とのパイプは続いているとされ、今月2日にあった北九州空港の滑走路延伸工事の着工式でも、麻生氏は武内市長に「なんかあれば言ってくれ」と激励している。

 ある市幹部は「既成政党に頼らずに初当選したことに自信を持っている。自民と協調してしまえば前市長と一緒になり、自分のやりたいことができなくなるという考えが市長にはある。麻生さんがバックにいることも大きい」と指摘。既成政党におもねることなく、自らの政治理念と政策を貫くことで民意を味方にできると解説した。

 自民市議団の要望は日程キャンセルから約1カ月後に実現したが、市議団内には依然として武内市長への不信がくすぶる。ただ、市議は2025年に改選を控えており、ベテランの自民市議は「武内市長と対立して市民から悪く見られたくないという市議も多い。市議団も一枚岩ではない」と本音を漏らす。

 「武内旋風」にたじろぐ最大会派。武内市長は21日の記者会見でこう語った。「前市政との比較で言えば、本来あるべき健全な緊張感が大事だ。なれ合い政治からは脱却しなければいけない。二元代表制なのでそれぞれの機能を持ちながら健全な緊張感を持ってやりたい」【日向米華】

毎日新聞 2023/12/22 07:00(最終更新 12/22 08:33) 1814文字
https://mainichi.jp/articles/20231221/k00/00m/010/413000c