秋田県が開発したコメの新品種「あきたこまちR」を巡ってSNS(交流サイト)で農家を中傷しかねない発信が相次ぎ、県が「冷静な判断と行動」を呼びかける事態に発展している。
「R」は放射線による品種改良で開発されたもので「放射線」に過剰反応したためとみられる。一般的な品種改良の手法ではあるが、一部野党の国会議員も安全性を問題視している。

「不安をあおる情報や、県内農業者などに対して誹謗(ひぼう)中傷と受け取れる発信が目立っている」
秋田県は12月4日、ホームページ(HP)で「あきたこたちR」の安全性を説明した上で、こう懸念を訴えた。「内容によっては名誉毀損(きそん)罪などに問われる場合がある」とも警告した。

県は今年2月、艶や香りに優れる「あきたこまち」の魅力はそのままに、土壌に含まれる有害物質カドミウムをほとんど吸収しない新品種「R」に改良した。令和7年から「あきたこまち」は「R」に切り替え、海外販路拡大も目指す方針だ。

一方、「R」は、放射線を種子に1度照射するなどして開発された「コシヒカリ環1号」と「あきたこまち」を掛け合わせた経緯がある。放射線を巡ってX(旧ツイッター)上で「R」を危険視する根拠のない指摘が拡散している。市民団体も県の「R」への切り替え方針に反対を展開。11月14日には、国会で「R」について「何が問題なのか」と題した集会まで開かれた。

集会に参加した社民党の福島瑞穂党首は「R」の問題について、産経新聞の取材に「安全性の立証が十分にできていない。放射線を当てるわけだから‥」と語る。

放射線の照射による農作物の品種開発は一般的で、自然界でも起きている。「ゴールド二十世紀梨」が知られ、コメでは「レイメイ」や「キヌヒカリ」がある。
放射線を照射して育成したわけではなく、当然ながら「R」に放射線は残っていない。

佐竹敬久県知事は9月4日の記者会見で「R」について不安視する声について「サイエンスの面からみると完全に何も影響はない。ただ、サイエンスだけで済まないものがある」と複雑な心境をのぞかせている。
(奥原慎平)

産経新聞
2023年12月27日19:05
https://news.yahoo.co.jp/articles/43c8e88bd5bb58e432b1640f416798c171871001