自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、東京地検特捜部の捜査対象となった安倍派に所属する議員が政府や党、国会の主要ポストから外れる動きが加速している。通常国会が開会した26日には、昨年の臨時国会で14人いた安倍派の衆参両院の委員長・会長職のうち11人が交代した。役職を退くことになった安倍派の議員からは、仕事を途中で投げ出すことになったことについて、幹部への恨み節も聞こえてくる。
◆「離党しろというのか」と怒った安倍派幹部
 安倍派の幹部は26日午後、国会内で非公開の常任幹事会を開いた。安倍派幹部に対しては離党などを求める声もあるが、この日は、当初29日を予定していた派閥の政治資金収支報告書の訂正を31日に行うことなどを確認したのみ。幹部の「政治責任」について具体的な議論には踏み込まなかった。幹部の一人は、責任の在り方を問う記者の質問に「離党しろというのか」と怒りをあらわにした。終了後、塩谷立座長と高木毅事務総長らは記者会見を開くことなく立ち去った。

 衆院の委員長・審査会長のうち、安倍派議員は6人から1人に激減し、参院でも8人から2人に減った。座長の塩谷氏は、疑惑や法令違反が取り沙汰されている政治家の政治的・道義的責任について審査や勧告を行う衆院政治倫理審査会(政倫審)会長を務めていたが、この日交代となった。立憲民主党の安住淳国対委員長は「疑惑を持たれた人は政倫審で発言を」と促しており、塩谷氏も政倫審に呼ばれる可能性がある。

 安倍派の野上浩太郎氏から交代し、茂木派から退会する意向を示した石井準一参院国対委員長は「不記載の事実関係がない2人だけは委員長を続投させる判断をした」と述べ、6人は不記載を認めたなどとして交代させたと説明した。
◆最大派閥から政務官5人だけに
 「国政に遅滞が生じないように」との理由で岸田文雄首相が「安倍派外し」を始めたのは昨年12月14日。政府では要の松野博一官房長官を筆頭に、西村康稔経済産業相と鈴木淳司総務相、宮下一郎農相の4閣僚を臨時国会が閉会した翌日に交代させ、閣僚から安倍派を一掃した。
 同時に副大臣・政務官の6人なども辞任するなど、最大派閥であるはずの安倍派の政務三役は政務官の5人のみに。派閥のバランスを重視してきた岸田政権にとって異例の状況となった。
 宮沢博行衆院議員は防衛副大臣の辞任について「政務(三役)だからやれることがいっぱいある中、仕事が中途半端なまま防衛省を去らなければいけないのは本当に悔しい」と訴えた。

 党役員では、松野、西村両氏とともに安倍派の運営を主導した「5人組」の萩生田光一政調会長と高木毅国対委員長、世耕弘成参院自民幹事長も身を引いた。
◆幹部に「説明責任」求める声も
 派内には、今回のパーティー券収入の一部還流について「慣習だった」との説明にとどまる塩谷氏や5人組の対応にいら立ちが募り、「説明責任が十分ではない」との不満がたまっている。一方で、「安倍派の主要幹部は閣僚や党役員を辞職し、会見を開いて使途も含めて明らかにしている。十分責任は果たせたと思う」(大西英男衆院議員)と擁護する声もある。
 松野氏は26日、国会内で会見を開き、政府や党、国会で安倍派議員が要職から相次いで外れていることについて「国会運営が差し障りないようにとの考えの中で行われたのではないか」と述べた。(山口哲人)

東京新聞 2024年1月27日 06時00分
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