離婚後の父母がともに子の親権を持ち続ける共同親権を導入する民法改正要綱案。父母が協力して子育てを続ける機運の高まりが期待される一方、自民を含む与野党には導入への慎重論もある。離婚後の家族のあり方を大きく変えかねないだけに、条文案が固まる前から議員らの激論が交わされている。
◆超党派の勉強会で想定される課題を確認
 「子どもが海外に修学旅行に行く際、親権者がパスポートの発行を拒否したら、どうなるのか」「対立が増え、日々の暮らしで大変なひとり親が裁判所に通わなければならなくなる」
 9日に開かれた超党派議員の勉強会では、導入後に想定される課題に関する意見が相次いだ。発起人は、自民党の野田聖子元総務相と立憲民主党の福山哲郎元幹事長。両党と日本維新の会、共産、社民の各党から計14人が参加し、法務省の見解や子連れで離婚した人たちの意見を聞いた。
◆立民・福山哲郎氏は「前提に無理がある」
 野田氏は「性別による対立や中傷が起きやすいテーマ。親のエゴでなく、子どもの利益に資するための冷静な議論が必要だ」と求めた。福山氏は子どものころ、父から母へのドメスティックバイオレンス(DV)があり、自宅から逃げた経験を明かし「本当にみじめで、恐怖だった」と語った。要綱案は、人格の尊重や協力を明記したが「それができる相手なら離婚や紛争にならない。法案の前提に無理がある」と訴えた。
◆与党は「意義を丁寧に伝えないと」「議論尽くすことが重要」
 共同親権を巡っては、導入を推進する超党派の共同養育支援議連(会長・柴山昌彦元文部科学相=自民)もあり、所属政党にかかわらず議員間で賛否がある。
 自民の法務部会関係者も「党としては推進が基本姿勢だが、意義を丁寧に伝えないといけない」と漏らす。公明党の山口那津男代表は13日、記者団に「不安を招かないように議論を尽くすことが重要だ」と語った。
◆共産・田村智子氏「子どもの視点欠く」
 共同親権の導入推進を公約する維新は、独自法案の提出も模索。藤田文武幹事長は14日の記者会見で「強引に押し切るのではなく、絡んだ糸をほぐしながら前進させたい」と説明した。共産党の田村智子委員長は同日の会見で「そもそも『親権』という考え方は子どもの権利の視点を欠く。大本の議論が必要だ」と語った。(大野暢子)

東京新聞 2024年2月16日 06時00分
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