https://news.yahoo.co.jp/articles/8741bd36d4f4b689e0ab7264441161743f569701
<ロシアの侵攻を想定して営々と築いてきた軍事力には他国にない特徴がある。一例が、浅海で活動できる潜水艦やステルス性能を持つコルベット艦だ>
 スウェーデンがNATOに加盟申請をしたのは2022年5月。
ハンガリーが最後まで難色を示していたが、同国議会が加盟を承認し、21カ月に及んだ長い待機期間がようやく終わった。
これでNATO加盟国は32カ国となる。
拡大を促したのは、2022年2月に始まったロシアによる本格的なウクライナ侵攻だ。
フィンランドとスウェーデンの加盟申請には、ウラジーミル・プーチン大統領はじめ、ロシアの閣僚らが脅迫じみた牽制発言を繰り返してきた。

ロシアと約1300キロにわたって国境を接するフィンランドのNATO加盟が2023年4月に確定し、さらに今回その隣国のスウェーデンも加盟したことで、
北欧と北極圏におけるNATOの安全保障環境は大きく変わる。
一部の加盟国に「NATOの湖」と呼ばれるようになっているバルト海は、スウェーデンの加盟により、ほぼ完全にNATO加盟国に囲まれることになった。

EU加盟国であり、NATOとも親密な協力関係にあったスウェーデンとフィンランドは、何十年も中立の立場を取りつつ、ロシアの侵攻に備えて防衛能力の構築を着々と進めてきた。
両国が中立政策を放棄したことで、NATOは比較的小規模ながらもロシア軍を手こずらせ、甚大な被害を与えることに特化した2つの軍隊を手に入れたことになる。

■北欧はNATOの要塞化
英シンクタンク・王立統合軍事研究所(RUSI)の国際安全保障研究ディレクターのニール・メルビンは本誌に対し、
「注目すべきはスウェーデン軍の優れた装備がNATOにもたらされることだ」と語った。
「空軍は高度な能力を持つ戦闘機100機余りを保有し、海軍は潜水艦の運用で長い実績を誇る。
しかも、この国の防衛産業は先端的の兵器システムを開発する技術を持っている」

また加盟国が攻撃を受けたらNATO全体への攻撃とみなして防衛するというNATOの集団防衛体制がスカンジナビア半島全域に拡大されることで、
「北欧はNATOの(ロシアに対する)前線のとりでに変容する」と、メルビンはみる。

ではスウェーデンの加盟で、NATOに新たにどの程度の戦力がもたらされるのか、具体的に見ていこう。
現役の兵員数はわずかで、2万4000人前後。加えて予備役が1万1400人、治安維持や防災に当たる郷土防衛隊が2万1000人程度だ。
復活した徴兵制により、現在は毎年6000人が予備役に加わっているが、スウェーデン政府は2025年までにこれを8000人に拡大すると発表している。

歩兵部隊を支えるのは、高い攻撃力を誇るCV90をはじめ、500台前後の歩兵戦闘車だ。
スウェーデンは2023年にウクライナに51台のCV90を供与した。
スウェーデン陸軍は2023年初めの段階でドイツ製の主力戦車レオパルト2を120台配備していたが、政府発表によると少なくともその「10分の1」はウクライナに供与したという。

■空軍と海軍に期待大
陸軍はまた、口径155ミリのアーチャー自走榴弾砲を26台保有している。
うち8台はウクライナに供与されたが、この榴弾砲は対砲兵攻撃を回避できる機動性の高さを特長とし、
砲撃地点に到着して、弾を装填して3発撃って、撤収するまでに75秒足らずしかかからない。
発射角度も変えられ、3発を同じ目標に対して違う軌道で撃ち、同時に着弾させることも可能だ。
この榴弾砲に搭載可能な砲弾のうち、最も射程距離が長いのは、アメリカ製のM982エクスカリバーで、最長で50キロ先の目標を攻撃できる。

とはいえ、スウェーデンがNATOにもたらす最大の貢献は、空軍及び海軍力の増強だろう。
この国は3200キロ超に及ぶ入り組んだ海岸線、バルト海、そして北極圏も含む領空を防衛するために、空と海の守りを固めてきた。
スウェーデン空軍は国産の戦闘機サーブJAS39グリペンを100機前後保有する。
グリペンは西側世界で最も多くの用途に使える戦闘機の1つと見なされ、ロシアの侵攻を想定した設計になっているため、ウクライナへの供与も検討されている。

RUSIの研究員、ジャスティン・ブロンクは2023年2月に、グリペンの特徴を次のように解説した。
「明らかにロシア(の地対空ミサイル)迎撃のために開発された超音速ジェット機で、極めて低空を飛行でき、電子戦システムを内蔵している。
整備をしやすい利点があり、車両で移動する機動部隊が広範囲に分散した基地から運用できる」

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