3/18(月) 8:52配信
産経新聞

17日に開票されたロシア大統領選で、プーチン大統領が過去最高の得票率で通算5選を確実にした。社会の安定を重視する統治方針や、ウクライナ侵略を「祖国防衛戦」だと正当化する論理を多くの国民が支持したとみられる。ただ、プーチン氏の「歴史的勝利」が演出された背景に、政治弾圧や予算のばらまき、投票への動員といった政権側による数々の作為も働いていたことは無視できない。

プーチン氏は事実上の選挙公約演説とした2月の年次教書演説で、欧米などの対露制裁下でもロシアは発展を続けていると強調。国の伝統や文化を守る重要性を訴えた一方、「ロシアを内部から弱体化させようとした」と欧米を批判した。プーチン氏の強い指導者像や保守思想が、少なくない国民の共感を呼んで得票に結びついたとみられる。

ただ、今回の選挙結果から、圧倒的多数の国民がプーチン氏を支持したと結論付けるのは短絡的だ。プーチン氏の圧勝の裏には作為的な要素も多いためだ。

第1は、長年の政治弾圧の結果としての対抗馬の不在だ。ロシアではプーチン氏の敵対者の多くが投獄されたり、亡命に追い込まれたり、不審な死を遂げたりしてきた。今回の大統領選も反戦派の出馬予定者が排除され、投票前から「できレース」と化していた。

第2はばらまき政策だ。プーチン氏は年次教書演説で、子育て世帯への経済支援や貧困対策の拡充、公務員の所得増、インフラ整備などを幅広く約束した。国営ロシア通信によると、発表された金額の総計は17兆ルーブル(約27兆円)に上る。

第3に投票への動員が挙げられる。独立系露語メディア「メドゥーザ」によると、与党「統一ロシア」党員や公務員、国営企業従業員らは、自身の投票に加えて一定数の知人も投票させるよう党や職場から指示された。実際、投票所では多くの有権者が自身の投票を証明するためとみられる写真や動画を撮影していた。

第4に選挙システムの変更がある。大統領選の投票日は従来、1日限りだったが、今回から3日間とされた。初の電子投票も導入された。ある露メディア関係者は「電子投票した有権者は、投票先の記録を当局側に追跡されることを恐れ、ほとんどがプーチン氏に投票したはずだ」と話した。

また、投票が行われたウクライナ東・南部4州の露占領地域では、武装した兵士を伴った選挙委員が住民を戸別訪問し、半ば強制的に投票させたとされる。
さらにロシアでは長年、得票率や投票率が操作されている疑いが指摘されてきた。ロシアは今回、欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視員の受け入れも拒否。発表された結果に偽りがないかは闇の中だ。

ソース https://news.yahoo.co.jp/articles/bc4356b5940063a6759a2c297710772ed3f91e7d