大型連休でにぎわう城崎温泉街(兵庫県豊岡市)に、食事を提供しない素泊まりの宿泊施設が増えている。人手不足の中で省力化が図られるほか、食事付きの宿泊プランを好まないインバウンド(訪日客)のニーズにも対応できるからだ。ただ、1泊2食の宿泊が基本だった温泉街で飲食店の集積が追いついておらず、「外食難民が増えている」(城崎温泉観光協会)のが現状。変化の波が寄せる局面で、地域の「おもてなし力」が試されている。(丸山桃奈)

温泉街を流れる大谿川沿いで、旅館「赤石屋」の改装工事が大詰めを迎える。客室を18から14に減らしてサウナを新たに導入。1958年創業の老舗が、夕食の提供をやめ、インバウンド向けの素泊まり宿に生まれ変わる。6月下旬のプレオープンを経て7月中旬の全面開業を目指す。

 照準とするインバウンドは、食事費を抑えて安く泊まりたい「泊食分離」の志向が強いとされる。その客足が新型コロナウイルス禍から急ピッチで回復。豊岡市によると、2023年の市内の外国人延べ宿泊数は前年比9倍の6万679人で、うち城崎エリアが5万701人だった。

赤石屋を運営する日和山観光(豊岡市)の今津一也代表取締役(56)は「素泊まりは商機がある」と強調する。ただ、周辺に朝食が食べられる店は少なく、朝食は提供する考え。業界の人手不足を踏まえると、インバウンドの回帰は渡りに船だ。「夕食をやめるので人員を多く確保しなくて済み、長時間労働を防げる。宿の定休日を設けて働きやすい職場をつくりたい」と意気込む。

 3月には、素泊まり専用の「ホステルわらく」が開業した。夕・朝食をなくし、館内のキッチンで宿泊客が自炊できるようにした。「食事付きのプランだと、滞在中の行動が制約される場合もある」と運営会社の椿野陽一郎取締役(33)。「家族が経営する旅館は食事を提供しているが、そこより4割ほど価格も抑えられた」と自信を見せる。

続きは神戸新聞 2024/04/29
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