【ワシントン=長沼亜紀】米商務省は18日、貿易赤字の要因を分析する公聴会を開き、企業幹部や業界団体、労働団体の代表、学者ら約40人から実態や見解の聞き取りを行った。
製造業団体からは中国などの「不公正貿易」による苦境を訴える声が相次いだ。

公聴会は、トランプ大統領が3月に発令した貿易赤字削減に関する大統領令に基づき実施された。商務省はすでに寄せられた150件以上の意見と合わせて報告書にまとめ、6月30日までに大統領に提出する。
ロス商務長官は、モノの貿易赤字は中国が約半分、日本、ドイツ、メキシコの合計が4分の1を占めていると指摘したうえで「貿易障壁、不公正な競争、貿易協定、通貨について広範な意見が寄せられている」と取り組みの意義を強調した。

公聴会では、鋳造企業の幹部が、過剰生産の中国から大量の低価格製品が押し寄せた結果、2000年以降鋳造業の工場の44%が閉鎖に追い込まれたと説明。
「強い姿勢で戦わなければ、雇用と国家の安全を守れない」と訴えた。
また鉄鋼労働者団体代表は、貿易機関に不公正な慣行を訴えても勝訴する前に雇用が失われてしまうと指摘し、「貿易法は役に立たない」と批判した。

一方、エコノミストなどからは「サービス分野も含めて議論すべきだ」「貿易赤字は米経済の健全度を測る基準ではない」との意見も出た。

配信 2017/5/19 9:11

日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H1R_Z10C17A5EAF000/