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2017/05/22(月) 21:37:25.07ID:CAP_USER9世界最大の樹上生活者として知られるオランウータンが、新たな世界一に輝いた。霊長類で最も授乳期間が長いことが明らかになったのだ。5月17日付けの科学誌「Science Advances」に発表された論文によると、授乳期間が8年を超えることもあるという。
野生のオランウータンの離乳時期については、ほとんどわかっていない。彼らは大部分の時間を樹上で過ごし、地上から観察できないからだ。しかし、オランウータンの保護活動において、オランウータンが独り立ちをする時期を知ることはとても重要だ。
そこで、オランウータンの授乳期間を調べるため、オーストラリア、グリフィス大学の生物人類学者ターニャ・スミス氏らは、巧妙な手法を編み出した。オランウータンの子の歯に微量に含まれる元素バリウムの量を分析するのだ。バリウムは母乳から吸収されて蓄積したものなので、その量から授乳期間を明らかにできる。
インドネシアのグヌンパルン国立公園でグヌンパルン・オランウータン・プロジェクトを率いる研究者シェリル・ノット氏は、「この論文は、野生の霊長類の歯から離乳時期を特定するという、新たな素晴らしい手法を提案しています」と説明する。
■歯のバリウムを分析
「オランウータン」という言葉は、「森の人」という意味のマレー語からきている。オランウータンはスマトラ島とボルネオ島の木の上で暮らしていて、スマトラオランウータン(Pongo abelii)とボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)の2種が知られている。
スミス氏のチームは、博物館に保管されていた骨格標本を使って、スマトラオランウータンの子2頭とボルネオオランウータンの子2頭の歯の分析を行った。
論文によると、臼歯の成長パターンとバリウム濃度を調べたところ、歯に含まれるバリウム濃度は1歳から徐々に低下していくが、おそらく10歳近くまで存在することが示された。
例えば、あるボルネオオランウータンは8.1歳で離乳していたし、別のスマトラオランウータンは、8.8歳で死亡した時点でもまだ乳を飲んでいた。ちなみに、野生のオランウータンは15歳前後で最初の子をもち、50年近く生きると考えられている。
■乳離れできない事情
歯の分析から、バリウム濃度には食料である果実の多さと関連した周期的な変動があることもわかった。オランウータンの主食である果実が豊富な時期には、歯のバリウム濃度が低くなるのだ。
スミス氏は、オランウータンの子は、果実が不足する時期に母乳を飲んで飢えをしのいでいるのではないかと考えている。
「野生のオランウータンの子が母乳をどのくらい飲んでいるかを知るのは困難ですが、今回の研究により、かなり大きくなってからも母乳を飲んでいることがわかりました」とノット氏は言う。
不安定な食料供給は、オランウータンの成熟に時間がかかる原因になっている可能性もある。短期間で成長するためには食料がふんだんに供給されなければならないが、彼らの生息地はそのような環境ではないのだ。果実が確実に供給される環境なら、オランウータンの授乳期間はそんなに長くならなかっただろう、とノット氏は言う。
スミス氏も、人間に飼育されている霊長類が野生の個体より短期間で成熟する傾向があるのは、常に十分な栄養をとれるからではないかと書いている。
■激減するオランウータン
繁殖に時間がかかるオランウータンは、生息環境の変化の影響を受けやすい。アブラヤシのプランテーションをつくるために森林が伐採されるせいで、オランウータンの個体数は激減しており、今では絶滅の危機に瀕している。
世界自然保護基金(WWF)によると、ボルネオ島のオランウータンの個体数は過去60年間に半数以下になり、その生息地は過去20年間に55%以上減少した。スマトラ島では、100年前には23万頭いたオランウータンが、現在は1万5000頭も残っていないという。
スミス氏らの研究は、オランウータンの母子について、さらなる研究が必要であることを示している、とノット氏は言う。
「オランウータンを適切に保護するためには、その生息環境と、成長や繁殖の遅さとの関係を十分に理解する必要があるのです」
5/22(月) 7:20配信 ナショナル ジオグラフィック日本版 (画像あり)
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