https://www.cnn.co.jp/m/world/35101659.html

ニューヨーク(CNNMoney) 政情不安や食糧危機が深刻化する南米ベネズエラを離れ、米国に亡命や難民認定を申請する人が激増している。ベネズエラ人の申請者数は中国、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドルを抜き、初めてトップになった。

米フロリダ州マイアミのスーパーマーケットに足を踏み入れたエメリナ・ゲラさん(32)は、うれしさと悲しさで胸がいっぱいになったと語る。食品であふれる店内の光景は、故国ベネズエラでは5年以上前から見られなくなっていた。

この光景を見て、ようやく米国に来られたことを喜ぶ気持ちがこみ上げてきたというゲラさん。同時に、故国に残してきた両親のことを思って悲しくなった。

ゲラさんは2カ月前、2歳の息子と夫とともに、暴動が激化するベネズエラの首都カラカスを離れた。同国は政情不安に陥り、食糧は不足して、政治的迫害の恐れもあった。ゲラさん一家は米国にとどまるために、亡命申請を検討している。

ベネズエラでは政府機関の職員としてそれなりの収入を得ていたゲラさんだったが、その職を捨て、数個の手荷物と息子のための玩具のみを持って渡米した。マイアミまでの航空券は、自家用車を売ったお金を充てた。

ゲラさんも夫も現在は無職。観光ビザで滞在していることから、長期滞在ビザが下りるまで就労はできない。

米市民権移民局の統計によると、2016年度に米国に亡命を申請したベネズエラ人は1万4700人を超え、前年度の5605人に比べて160%増えた。今年度はまだ半ばだが、申請者はさらに倍増する勢いで、2番目の中国を大幅に上回る。ベネズエラ人の亡命申請者は今年度の申請者の5人中1人を占めている。

寄付された衣類や日用品などをベネズエラ人に提供しているフロリダ州のボランティア団体は、同国から押し寄せる人の多さに圧倒されているという。

危機的状態が深刻化した2014年の時点で助けを求める電話は数えるほどだったが、今では1週間に30世帯から日用品などの提供を求める問い合わせがある。

ベネズエラから来る人たちは、高学歴でも所持品はわずかな衣類を除いてほとんど持たない状態で渡米する。慈善団体ではそうした人たちに衣類や食器、調理器具、タオルなどを提供する。

「彼らは自分が寄付を求め、助けを求める立場になるとは思っていなかったはず」。同団体を運営するパトリシア・アンドラーデさんはそう話す。

ベネズエラでは食品や医薬品が極端に不足して混乱が深まり、大統領の辞任を求めるデモは3カ月目に入って、50人近い死者が出ている。

カラカスで暮らしていたころのゲラさん一家は、食料品の不足と価格の急騰で牛乳やコメなどの主食も買えない状態だった。

フロリダ州に到着すると、アンドラーデさんの団体に助けを求め、衣類や息子の玩具などの提供を受けた。ベネズエラを離れる決心をさせたのは、息子の存在が大きかったという。

今は夫の親類のもとに身を寄せ、1つ屋根の下に9人が暮らす生活。それでもカラカスの混乱から離れ、息子のためのより良い生活に期待が持てる。近いうちに英語を学んで米国で新しい生活をスタートさせたいと話すゲラさん。「帰国は考えられない」と打ち明けた。

2017.05.24 Wed posted at 13:55 JST