http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/event/15/051900123/060500029/?i_cid=nbptec_sied_toppickup

近岡 裕 2017/06/05 13:25

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図◎高精度なロケーター。1.5mの精度で自車位置を推定できる。

三菱電機は、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)向けにクルマ(自車)の位置を高い精度で割り出すことができるロケーターを開発、「人とくるまのテクノロジー展2017」(2017年5月24〜26日、会場はパシフィコ横浜)に出展した(図)。絶対位置を測定する衛星測位システムを複数使う「マルチGNSS測位」と、相対位置を推定する「3次元自律航法」を組み合わせ、自車の位置を1.5mの高精度で割り出せる。車載向けロケーターとして「世界一の精度」(同社の説明員)を実現した。

 例えば、左右のレーンのどちら側を自車が走行しているかまで細かく割り出せる。従って、自動運転で右折や左折を行う際に、事前に必要なレーン変更を実行するために使う位置情報を提供できる。現在のカーナビゲーションシステムで主流となっている、米国の衛星測位システム「GPS」を使う現行のロケーターの精度は5〜10m程度と粗かった。

 マルチGNSS測位は、GPSに加えて欧州の衛星測位システムである「Galileo」など複数の国・地域の衛星測位システムを使って位置を測定する方法。建物などの障害物に遮られることなく、クルマから見える可視衛星が多いほど測位精度は高まる。マルチGNSS測位では、障害物が全くないオープンスカイの条件で15基の衛星を測位に利用する。これに対し、現行のGPS測位では8〜9基程度と少なかった。

 新しいロケーターはこのマルチGNSS測位を使うことに加えて、GNSSから得た生データ(Rawデータ)を利用することも特徴。一般にロケーターには市販のGNSS受信機が内蔵されており、これで位置を割り出す。ところが、どの程度の信頼性があるかが分からない。そこで、新しいロケーターでは、GNSSのRawデータを使ってCPUで計算し、GNSS受信機の信頼性を評価したり、測位を行ったりする。これにより、高精度の絶対位置を割り出す仕組みだ。

 一方、3次元自律航法は、例えばトンネル内の走行など衛星測位システムが使えない場合に、自車の位置を推定する方法である。ジャイロセンサーと加速度センサー、車速センサーなどを使い、最後に衛星測位システムで計測したところからのクルマの相対的な位置を計算する。

 具体的には、トンネルに入る直前にGNSS測位で得た絶対位置の情報(緯度、経度、高度)を基準に、トンネル内の相対的な位置を計算する。だが、各センサーからの出力値には温度による誤差が含まれる。そこで、三菱電機は誤差補正技術を使って誤差を極力小さくし、自車の位置を割り出す精度を高めた。

 新しいロケーターは試作品を自動車メーカーに提供できる水準にある。開発の背景には、自動運転を視野に高精度なロケーターを望む声が自動車メーカーからあったという。価格は要相談。