6/6(火) 15:30配信

 性犯罪の罰則が110年ぶりに見直されるか−−。被害者の告訴がなくても罪に問える「非親告罪」化など、性犯罪厳罰化を柱とする刑法改正案が今国会で審議入りした。しかし、会期末が18日に迫るなか、いわゆる「共謀罪」の審議が優先され、成立が危ぶまれている。性暴力被害の当事者や支援者は最後のひと押しをしようと各方面で活動を続けている。7日には、ネットで集めた署名約3万筆を添えた要望書を金田勝年法相に提出する予定だ。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

 ◇ダンスやアート、政治に興味ない人にも届けたい

 活動しているのは、被害者や支援者ら四つの団体が結成して作ったグループ「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」で、「ビリーブ」と題したキャンペーンを展開している。そのスタイルがユニークだ。

 ターゲットとする20代前半の女性を対象に、事前に人気のカラーやデザインを聞き取り調査。青系の「ターコイズブルー」をテーマカラーとした。キャンペーンのロゴも、支援を広げることが大事だと訴える「片翼」をモチーフとしたデザインに決めた。政治に興味のない人にも届くよう、実体験に基づく紙芝居風の動画を作成したり、現行法の問題点を伝えるため路上でアンケートしたり。

 先月28日には、東京大(東京都文京区)でキャンペーンの集大成となるイベントも開き、約120人の参加者が刑法や性に関するメッセージを体で表現するダンスパフォーマンスを披露した。たとえば「平等」を表すサインは両手でイコールの形を作る。事前に投稿してもらった写真をもとに、サインをつなぎ合わせてダンスを構成。写真は自民、公明、民進、共産など与野党の国会議員を含む約100人が投稿してくれた。イベントでは片翼のメッセージカードに金田法相にあてた手紙も書いた。

◇署名3万筆を7日に国へ提出

 学生や市民向けのワークショップ、国会でのロビー活動に加え、刑法改正の早期実現と内容変更を訴える署名活動も継続中だ。

 現行の刑法では、強姦(ごうかん)罪の成立には被害者が加害者を告訴することが必要で、さらに被害者が抵抗できないほどの暴行や脅迫があったことを証明しなくてはならない。改正案では、強姦罪の名称が「強制性交等罪」と改められ、現行「懲役3年以上」の法定刑が「懲役5年以上」に引き上げられる。被害者の告訴がなくても捜査、立件できる「非親告罪」化も実現する。だが、暴行や脅迫があったと証明しなくてはならない点は改善されない。

 金田法相にあてた要望書では、暴行や脅迫がなくても同意のない状態での行為についてわいせつや強姦の罪に問うよう条文の修正を求めている。それが無理でも「必ず刑法性犯罪改正を実現してください」と強調している。内容に賛同する署名は、5日時点で2万8600筆が集まっている。

◇110年待った、もう待てない

 刑法改正案は今月2日に衆院本会議で審議入りしたが、加計学園問題に加え「共謀罪」の審議を優先され、成立するかどうか見通せない状況が続く。

 折しも、元TBS記者から性的暴行を受けたと訴える女性フリージャーナリストの記者会見が注目を集めたばかり。実父から性的虐待を受けた経験がある山本潤さんは「110年待った。もう待つことはできない」と強調する。

 山本さんは「女性が貞操を必死に守ったけれどダメだった、というケースしか犯罪と認められない場合が多く、被害者の権利が守られないのはおかしい」と訴えている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170606-00000059-mai-soci

https://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/06/06/20170606k0000e040250000p/8.jpg
「ビリーブ」キャンペーンで、女性問題に取り組むアーティストグループ「明日少女隊」による国会前でのスタンディングパフォーマンス=明日少女隊提供