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【6月21日 AFP】世論の操作を目的に偽りの情報を拡散する「コンピューターを使ったプロパガンダ」が、世界の政治に影響を与えている──。こうした動きの背景に見えるのは主にロシアの存在であると専門家らが20日、発表した。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)の研究チームは同日、米首都ワシントン(Washington D.C.)で行われたプレゼンテーションで、米国を含む9か国における政治的感化を狙った自動化プログラムやソーシャル・メディアでのボットの使用に関する調査研究について発表した。

 同大のフィリップ・ハワード(Philip Howard)氏とサミュエル・ウーリー(Samuel Woolley)氏が率いる研究チームは、コンピューターを使ったプロパガンダについて「民主主義に脅威を与える最も強力なツールのひとつ」と指摘する。

 プレゼンテーションでハワード氏は、「ロシアのサンクトペテルブルク(St. Petersburg)に数百人の作業員を収容する建物があり、そこでは数百万ドルの予算を投じて、多くの国を対象にした世論操作を専門的に行っていることが分かっている」と述べた。

 また同氏によると、ロシア型のプロパガンダでは、「対立、そして矛盾する話の種を複数撒く」のが特徴なのだという。このことについてウーリー氏は、人々を混乱させることが目的で、必ずしも偽の話を売り込むことは前提ではないと指摘。そして、政治および政策全般に対する人々の関心を失わせ、もう関わりたくないと思わせることが一番の狙いと説明した。

 研究チームは、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、ポーランド、台湾、ロシア、ウクライナおよび米国を対象に、2015〜2017年の選挙、政治危機、国家安全保障にかかわる事件での、7つの異なるソーシャルメディアへの投稿数千万件を分析した。

 政治の世界では、プロパガンダと偽ニュースは長きにわたり使われてきたツールだが、自動化とアルゴリズムを駆使し、ソーシャルメディア向けのボットを準備することで、偽情報が拡散するスピードは以前よりも増している。

■見せかけの支持が実際の支持に

 フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)などのプラットフォームは、偽ニュースの拡散を抑制するための措置を講じてはいるが、その一方で、内容の編集や統制については立ち入ることができないことを認めている。また専門家らによると、匿名でアカウントを生成できるツイッターの方がより簡単にボットを作ることができるという。

 研究チームは、2016年米大統領選に与えたボットの影響は小さくなかったとの見方を示している。

 その働きについて研究チームは、「数多くのボットが群を成して、ある候補者のコンテンツをフォローやリツイートしたり『いいね!』を押したりすると、その候補者のイメージは、より正しく、より広範な支持を得ているといったものになる。候補者に対するこうしたオンライン上の見せかけの支持は、有利な側につくという人々の心理に働きかけ、実際の支持にもつながっていく」と説明した。

 研究者らによると、ロシアでは、ネット上での政治に関する会話の45%が「高度に自動化されたアカウント」で占められていたという。(c)AFP/RobLever

2017/06/21 14:16(ワシントンD.C./米国)