再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は1日、運用開始から丸5年となった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、太陽光や風力の発電施設が急増。
東北電力の送電網は、再生エネの電気を受け入れる空き容量が青森、岩手、秋田の北東北3県で既にゼロになった。他県も空きは乏しく、現状のままでは新たな事業参入は一層厳しさを増す。(報道部・村上浩康、高橋鉄男)

<北東北 空きゼロ>
東北電は、新潟を含む東北7県の既存の送電線と変電所の容量をベースに、既存の発電所(停止中の原発を含む)が作る電気に再生エネの接続申請分を追加する形で空き容量を算定している。
5月末現在の空き容量ゼロ地域は図の通り。北東北3県は2016年5月からゼロで、他県も地価が高い都市部などを除き多くのエリアで容量が埋まった。
 
買い取り制度によって、東北では山間部を中心に大規模太陽光発電施設(メガソーラー)や風力施設の建設計画が急増。
人口が少ない地域は地価が安いなど建設コストで有利だが、電力需要が少ない分、送変電施設の受け入れ容量がそもそも小さく、新たな電力を運ぶ基幹送電線も容量が足りない構造的な課題がある。
送電網につなぐ際、再生エネ事業者は送電設備の工事費を負担。空き容量がゼロだと、加えて送電網の増強に伴うコストが増す。

<発送電分離 期待>
国は15年、対策として接続を希望する複数の事業者を募集して工事費を分担する仕組みを導入した。
これを受け東北電管内では現在11カ所で募集しているが、増強のめどは北東北3県エリア(増強容量約280万キロワット)が29年度になるなど、実現まで先は長い。
再生エネ事業者は「接続に時間がかかる上に採算性が厳しくなり、参入は難しくなった」とため息を漏らす。東北電は「送電網を最大限活用して受け入れてきたが、残る容量は少ない。募集制度を活用して接続拡大に努めたい」と話す。
 
受け入れ可能量は「既に限界」との雰囲気も漂う。制度上、東北電は事業者に無補償、無制限で発電抑制を要請できる仕組みになっており、後発組は事業計画を立てづらい。
高橋洋都留文科大教授(行政学)は打開策として、20年に大手電力会社の送配電部門を分社化する「発送電分離」を挙げる。
「再生エネ拡大は世界共通の方向性で、原子力や火力をベースロード電源として優遇する日本は時代遅れ。独立した送電会社が、責任を持って再生エネを引き受ける仕組みが必要だ」と指摘する。

[固定価格買い取り制度] 再生可能エネルギーの普及を目的に太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスで発電された電気を、電力会社が10〜20年買い取るよう義務付けた。
買い取り費用は電気料金に上乗せする「賦課金」として利用者から徴収。設備急増に伴う国民負担の抑制が課題で、経済産業省は本年度、太陽光発電の買い取り価格を1キロワット時当たり40円(出力10キロワット以上)から21円に引き下げた。
買い取り価格を抑えるため、2000キロワット以上の大規模設備は10月をめどに入札制度を導入する方針。

配信 2017年07月01日土曜日
河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201707/20170701_72009.html