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2日、イラク・モスル旧市街で、過激派組織「イスラム国」(IS)の盾にされた経験を語るワファ・ワダハさん(左)。この日逃げて来たばかりで動揺を隠せない様子だった

【モスル(イラク)時事】過激派組織「イスラム国」(IS)は、イラクで最大の拠点としていた北部モスルの陥落が迫る中、多数の市民を「人間の盾」にして軍の奪還作戦に抵抗している。
軍などの推計によると、残された住民は数万人ともいわれる。命からがらISの虐待から逃れてきた人々が、過酷な「人質生活」の惨状を語った。

◇汚水強要、食料はIS独占

気温が40度を超えるモスル旧市街の一角で2日、狭い避難所に身を寄せ、傷の手当てや食べ物を受け取る住民らがいた。戦闘が激しくなったこの日朝、監視が緩んだISの隙を見て逃れ、軍に保護・移送されたという。

シファ・ワダハさん(33)は、左腕に点滴を受ける息子の隣で目を真っ赤にしていた。祖父の家からISに拉致され、6日間にわたり家屋を転々とした。地下トンネルに連れ込まれ、清潔な飲料水を飲むIS戦闘員の横で、汚れた地下水を飲まされた。
「ISメンバーは果物や缶詰など良い物ばかり食べ、私たちには何も食べさせない。抵抗すると頭に銃を突き付けられる毎日だった」。夫や親戚の多くがISに殺害された。

一緒に拉致された妹のワファさん(31)は、すさまじい爆音に近距離でさらされ続け「耳が聞こえにくい」と医師の診療を受けた。2歳と7カ月の子供2人はミルクも薬も与えられず、極度の下痢で下血に苦しんでいるという。
空腹に耐えかねたのか、2歳の子は配られたクッキーをむさぼるように食べていた。

移動診療車で対応に当たるニザル・ムハンマド医師(50)によれば、多くの住民は栄養失調の状態で救出される。大抵は点滴で容体が安定するが、重度のけがで病院搬送が必要な人も多い。
しかし、破壊されたモスルの医療施設は稼働できず「医師の数も全く足りない」と頭を抱える。


2日、イラク北部モスルの旧市街で、放心状態のマリアム・アリちゃん
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◇放心の子供
避難所の隣の歩道では、助けられた女児がジュースを飲みながら座り込んでいた。マリアム・アリちゃん。3〜4歳と思われる自分の年齢は「分からない」と話す。
簡単な質問にも、半ば放心状態で「みんな死んじゃった。フセインとアリーとファトマと遊んだ。ママは私のこと心配していたよ」と支離滅裂な答えばかり。

そばにいた支援スタッフが「彼女の父と母は殺された」と説明してくれた。心配した人が2日午後、女児の姿をフェイスブックに投稿すると、軍が1月に解放したモスル東部で祖父が生きていると連絡が寄せられた。

配信 (2017/07/03-14:28)
時事ドットコム
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