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[マラウィ(フィリピン) 5日 ロイター] - フィリピンのドゥテルテ大統領が、「イスラム国(IS)」系武装勢力が南部ミンダナオ島のマラウィを占拠した直後に、武装勢力側と取引する用意を進めたものの、説明なく取りやめていたことが分かった。交渉に関わった仲介者が明らかにした。

著名イスラム教指導者アガハン・シャリーフ氏はロイターに対し、イスラム系武装勢力のマウテグループが5月23日にマラウィの一部を占拠して住民数百人を人質にとった直後に、ドゥテルテ大統領側近から接触があり、マウテ指導者との人脈を使って、水面下での交渉を始めるよう要請されたと述べた。

事情に詳しいマラウィの消息筋2人も、大統領が水面下でマウテグループを率いるオマルとアブドゥラのマウテ兄弟との接触を試みていたと認めた。

しかしドゥテルテ大統領が5月31日に行った演説で「テロリストとは対話しない」と宣言すると、プロセスが中断されたという。

なぜドゥテルテ大統領が急に翻意したかは、明らかになっていない。この5日前のテレビ演説で、大統領は武装勢力に「まだ対話によって解決することができる」と呼びかけた上で、もし説得できなければ「仕方がない。戦うだけだ」と述べていた。

「大統領の問題点は、すぐに気が変わることだ」と、長年情勢が不安定な南部ミンダナオ島で数々の和平協議に関わってきた聖職者のシャリーフ氏は言った。「もうテロリストとは対話しないと大統領が宣言し、われわれの交渉は中断した」

ドゥテルテ大統領の和平交渉特使ヘスス・ドゥレーザ氏は、水面下の交渉については何も承知していないと述べた。ヘルモヘネス・エスペロン国家安全保障会議議長は、大統領がマウテグループに接触した可能性は低いと話す。「なぜ彼がテロリストと話すのだ」と、エスペロン氏は言った。

表向きの強硬発言や、武装勢力を壊滅させるとの頻繁な公約にも関わらず、ドゥテルテ大統領は、和平の仲介者として知られている。情勢が不安定な人口2200万人のミンダナオ島で、ダバオ市長を22年務めるなかで、分離派やマルクス主義派の反乱勢力に対応した実績がある。

<最大の危機に直面>

マラウィを巡る攻防は、就任1年を迎えたドゥテルテ政権が直面する最大の危機だ。

マウテグループなどISに忠誠を誓う戦闘員が、同市の商業地区を占拠し、フィリピン軍は40日以上にわたり空爆や爆撃を仕掛け、市街地戦を繰り広げている。

戦闘員337人、治安部隊85人、そして住民44人を含む400人以上が死亡。26万人の住民が避難民となった今回の占拠で、ISが東南アジアに拠点を築こうとしているとの恐怖が地域に広がった。

マラウィのマジュール・ウスマン・ガンダムラ市長は、水面下での交渉が始まっていたことを認めたが、詳細は承知していないと述べた。

同市長はロイターに対して、プロセスが失敗したのは、ドゥテルテ大統領側が手を差し伸べた後も、武装勢力側に不誠実な態度が見られたり、政府軍に対する攻撃の手を緩めなかったためだと指摘。

「和平の機会はあった。だが誠実さがみられなかった」と、市長は語った。
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Martin Petty
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

2017年 7月 6日 3:39 PM JST