本の人口減少に歯止めがかからない。
豪メディア『news.com.au』は、2045年には毎年90万人規模の減少ペースに達すると報じ、「これは毎年(豪首都)キャンベラに相当する都市2つ分の人口が消えてゆくに等しい」と、状況の深刻さを強調する。

◆サラリーマン文化の崩壊に加え、男女不平等が問題を加速

英インデペンデント紙が原因と見るのは、サラリーマン文化の崩壊だ。
長年にわたり、日本は一つの会社で生涯働き続ける国と見られてきた。

しかし近年では非正規雇用が増加し、所得の低下が結婚と出産を阻害していると報じる。
30代前半までに結婚している割合は正規雇用者では56%に達するのに対し、非正規では30%と約半分の水準に留まる。

一方、米アトランティック誌は不安定な経済状況に加え、日本での男女不平等が事態を悪化させていると見る。
男性が家庭を支えるという概念が日本では未だ根強く、それが低収入層の男性の結婚を阻んでいるとの見方だ。
「男性が一家の稼ぎ手となることに相当な重きを置く文化では………」との表現からは、男女平等の理念の実現が進む欧米に比べ、未だ強い固定観念が残る日本の価値観に対する疑問が見え隠れする。

◆日本の性文化がセックスレスを招いているとの指摘も

英BBCが注目するのは、日本のユニークな性文化だ。
18歳から34歳の日本人のうち、実に4割を超える人々に性交渉の経験がないというデータを挙げ、ラブホテル発祥の国としては奇妙だと論じる。

また、同メディアでは、傷つきたくないため実在の女性よりアニメを選んでしまうという声を紹介している。
アニメ大国として名を馳せる日本だけに、人口問題の一端にはアニメがあると結びつけられているようだ。

同記事には豪メディア『news.com.au』も注目しており、出生数が100万人を切った日本にとっては深刻な問題だと見る。
使用済み下着の販売機があることに触れるなど、直接的な性交渉ではなく間接的に欲求を満たす国としての見方が伺える。
こうした独自の性の価値観が少子化に繋がっているとの議論もあるようだ。

◆解決には労働環境の改善や移民政策が有効とも

少子化対策に有効な手はあるのだろうか? 
アトランティック誌は労働環境の改善を挙げる。

これまでに月100時間の残業上限が設定されたことなどには一定の評価を与える。
しかし本質的に安倍政権は経済優先の姿勢を取っており、規制を嫌うことから、政策の実効性については楽観視できないとの立場だ。

インデペンデント紙は別のアプローチとして、ドイツの移民政策を引き合いに出す。
ただし、記事では触れられていないが、ドイツでは移民をめぐり社会問題も多発している。

言葉の壁などによる低い就職率や高い犯罪率が議論を呼んでいる状態だ。
メルケル首相率いるドイツCDU党は昨年9月の市議選で大敗を喫したが、BBCの報道によると、移民政策の失敗が敗因と首相自ら認めている。
日本でも移民の受け入れで事態が好転するかは不透明だ。

キャンベラ2つ分が毎年消滅するという冒頭に挙げた予測は衝撃的だ。
今後の対策には、海外メディアの視点から日本固有の問題を検討するというアプローチも有効であろう。

http://newsphere.jp/national/20170731-3/