東京都の市場移転問題で、小池百合子知事が公表した豊洲市場(江東区)と築地市場(中央区)の双方に機能を残す「豊洲移転・築地再開発」の方針について、財源や運営費などを検討した記録が残っていないことが、毎日新聞の情報公開請求で判明した。

都職員は「知事が外部有識者でブレーンの都顧問らと協議をしたため記録がない」と説明。数千億円規模の巨大プロジェクトの最終判断が「密室」で下され、その資料も存在していないという。
知事が改革の「一丁目一番地」とする情報公開も軽視された形だ。

市場移転を巡っては、公開で実施された庁内組織の「市場のあり方戦略本部」が、6月15日に築地跡地を売却して豊洲整備費を工面する案と、築地を民間に貸して賃貸料を整備費に充てる案を、具体的な金額の試算とともに提示した。

小池知事は戦略本部の案をそのまま採用せず、市場を豊洲に移転し5年後をめどに築地を再開発する豊洲移転・築地再開発の方針を発表。方針には再開発の財源や両市場の運営費などの試算、明確な根拠を盛り込まなかった。
そのため請求では「方針決定までの検討過程の記録」の開示を求めたが、都は「参考資料に該当するのは戦略本部の会議資料で、都のホームページで公表されている」と却下。どのような試算や議論を基に方針を決めたのかを示す記録が存在しなかった。

こうした事態について、側近の一人は「戦略本部と並行した外部有識者との協議で、豊洲移転・築地再開発案が検討されていた」と証言。戦略本部を公開しながら、記録に残らない協議を経て事実上、方針が決まったとした。
小池知事は毎日新聞に「最新の情報なども組み入れながら出した政策的な判断だ」と答えたが、別の側近はブレーンとの協議が最終判断につながったことについて「知事は役人を信用していない」と説明した。

小池知事は「豊洲市場の地下に盛り土をしないと決定するまでの議論が文書化されていなかったことは問題」とし、6月7日閉会の都議会定例会に、重要なことは決めた経過も文書で明らかにすることなどを定めた「公文書管理条例案」を提案。
条例案は可決され、方針公表直後の7月1日に施行されている。【林田七恵、森健太郎】

配信 2017年8月5日 07時00分
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170805/k00/00m/010/137000c