生命保険、損害保険各社が展開する、「認知症対応」を前面に打ち出した保険が異例のヒット商品となっている。
生保は自身や家族が認知症になった場合に保険金を支給。
損保は認知症患者が 徘徊 はいかい 中に電車にはねられた事故などで家族が損害賠償を請求された際などに、賠償金の一部を負担する。

認知症患者数が500万人を超える今、保険各社も知恵を絞っている。
経済ジャーナリストの中西享氏が解説する。

■ 異例の「大ヒット」

認知症の家族を抱える家庭の費用負担は深刻だ。
厚生労働省の認知症患者の実態調査を基にした推計では、認知症にかかっていない人の在宅介護に要する年間費用は約52万円なのに対し、認知症介護ではその2倍以上の約110万円に上るという。

そんな中、2016年3月に認知症特化型保険を発売した太陽生命保険の「ひまわり認知症治療保険」は、今年7月6日現在、23万件の契約を獲得。
「太陽生命の『保障型保険』の中では異例の大ヒットになった」(同社広報)という。

この保険は、加入時に必要とされる「告知項目」を極力減らして契約へのハードルを下げている。
シニア層を対象に、審査基準を緩めて多くの契約者を得た。

認知症に限らず、がんや心疾患、糖尿病などの「7大疾病」や、女性特有の子宮筋腫のほか、骨折なども保険金の支給対象となる。
月額の保険料は、契約時に60歳で保険期間が10年の場合、男性は月額4074円、対象となる疾病の種類が多い女性は4738円だ。

脳血管性やアルツハイマー型などの認知症と医師に診断され、「時間」「場所」「人物」のいずれかを認識できない状態が180日継続した場合、300万円が一時金として支給される。
太陽生命は「これまで要介護状態になった時に保障する保険で培ってきたノウハウを生かし、認知症特化型の保険を発売できた」(同)と説明する。

高血圧などの持病があって、ほかの保険に入れなかった人でも加入できるという。
同社のスタッフが自宅を訪問し、請求書類の書き方など手続きのサポートをするサービスもある。

■ 朝日生命は「即」追随

一方、朝日生命保険は昨年4月、「あんしん介護 認知症保険」を発売した。
太陽生命に1か月遅れで追随した形だ。
今年6月末現在、契約件数は4万8000件と当初の予想(発売1年で3万件)を大きく上回るペースで伸びている。

この保険は介護保険制度などの公的な基準と連動する形式で、医師が認知症と診断すれば、一時金か年金のどちらか、あるいは両方が支給される。
同社は12年に要介護状態になった場合に保険金を支払う商品を発売したが、家族などの負担が増える認知症もカバーする保険を求める声が強かったため、認知症に特化した保険も発売したという。

対象年齢は40歳から75歳まで。
保険期間が終身のケースでは、診断されたら一時金で300万円を受け取る場合、月額の保険料は50歳で男性が2043円、平均余命が長い女性が2451円。
終身年金で(年額60万円)は、男性は50歳で4242円、女性は7170円だ。契約の8割が一時金で受け取るタイプだという。

さらに、メットライフ生命保険も今年7月2日、特約で認知症も保障する終身医療保険「フレキシィ エス」を発売した。
対象は30歳から70歳で、一時金で300万円を受け取る場合、特約による追加保険料は、男性50歳で3270円、女性で4890円。

太陽生命の認知症保険の場合、保険金が支払われるまでに「認知症の状態が一定期間継続する」という条件があるが、メットライフの保険は、契約から一定期間後、認知症と診断されればすぐに一時金が支払われることがウリだ。
症状が軽いうちに治療を始めれば、認知症の進行を抑える効果も期待できる。
その治療費用に充てることができるというわけだ。

■ 大手生保は「認知症」前面に出さず

一方、大手の日本生命保険や第一生命保険などは、認知症に特化した保険商品を発売していない。
ただ「介護保障保険」は、認知症にかかって要介護認定を受けた場合に限り、保険金が支払われる。

日本生命は終身保険や総合医療保険など12種類の保険を組み合わせることができる「みらいのカタチ」を展開しており、その中の一つに介護保障が含まれている。
年間約50万件の契約実績となっている。

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170804-OYT8T50021.html?from=ytop_os1&;seq=01

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