データホライゾンとNTTドコモは、食用豚の生産管理コスト削減を目指し、IoT（インターネット・オブ・シングズ）の仕組みを活用した業務効率化の実証実験を2017年9月に開始する。
豚の成育状況や繁殖時期の把握、豚舎内の温度管理、飼料の消費量計測など、これまで人手で処理していた業務をIoTで省力化する。人件費の削減などで、豚肉1kg当たり約420円かかっていた生産コストを100円程度削減する狙いだ。
https://mw.nikkei.com/content/pic/20170818/96958A9F889DE0E2E3E1E6E1E1E2E3EAE2EAE0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXZZO2013437018082017000000-PB1-3.jpg
データホライゾンとNTTドコモが開発する養豚IoTの仕組み（出所:総務省）
今回の実証ではこれまでデータホライゾンが提供していた養豚の生産管理システムをクラウド上に構築する。通信回線はNTTドコモが提供し、豚の成育状況を観察するカメラ、飼料の消費量を把握するセンサー、温度や湿度を把握するセンサーからデータを収集する。
カメラ画像から豚の体重を推定することで飼料の量や出荷時期を決定し、無駄のない成育・繁殖スケジュールを作成できるようにする。
豚の出荷時期は体重によって決まり、一定範囲の体重のときに肉量や肉質のバランスがとれるので高い販売価格で出荷できる。データホライゾンによれば、豚の体重が100kgから110kgのときが出荷の目安となる。
これまでは人手で豚の体重を計測していたが、実証ではカメラ画像から体重を推定することで計測の手間を省く。
豚舎内に設置したカメラで複数の角度から豚を観察して体重を推定する。NECの人工知能（AI）に豚の画像データと体重データを学習させることで、体重測定が可能になった。
飼料を入れたサイロには残量センサーを取り付け、豚に与えた飼料の量を把握しやすくする。これらのデータをLTE通信でクラウドに送信し、データを可視化する。
また豚は温度変化に弱いため、豚舎内の温度や湿度を一定に保つことも重要な業務だ。豚舎内に温度センサーと湿度センサーを設置し、LPWA（Low Power Wide Area）通信でデータを送信する。IoTデータを基に、暖房や換気扇を自動で制御することも検討している。
豚肉の生産原価の半分は飼料代が占める。データホライゾンの生産管理システムでは穀物の市場価格に応じてコストを低減できるように、ブレンドする穀物の種類や量を調節するノウハウを実装した。そのほか子豚を生む親豚の選別機能や、繁殖の回転率を高める動態チャートも利用できる。
今回の施策は2017年7月7日に総務省からIoTサービス創出支援事業として採択されたもの。2018年2月まで沖縄県南城市、沖縄県豊見城市、沖縄県八重瀬町、埼玉県深谷市、千葉県旭市の5地区で実証実験を進めて効果を検証する。
（日経コンピュータ 佐藤雅哉）
［ITpro 2017年8月18日掲載］
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO20134330Y7A810C1000000/
