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「未来の乗り物」としてのハイパーループ(真空に近いチューブの中をカプセル型の乗り物がエアプッシュによって高速で移動する乗り物)を全世界に広める計画を持つハイパーループ・ワン社(本社ロサンゼルス、ラスベガスに実験走行路線を建設)が、昨年から募集していた「グローバル・チャレンジ」の勝者を発表した。

 グローバル・チャレンジとはハイパーループ建設を世界各地の自治体と共同で行うことを前提に、具体的な路線、建設計画などの提出を求め、ハイパーループ・ワン側が路線設置に適しているかどうかを審査、全世界で10の路線建設に乗り出すことを目的に行われたもの。応募は全世界100以上の地域から行われ、15カ月に及ぶ精査が行われた。

 その結果選ばれたのは「シカゴーコロンバスーピッツバーグ」「デンバーープエブロ」「マイアミーオーランド」「ダラスーヒューストン」(以上米国)「トロントーモントリオール」(カナダ)「メキシコシティーグアダラハラ」(メキシコ)「グラスゴーーリバプール」「エジンバラ?ロンドン」(英国)「ムンバイーチェンナイ」「ベンガルールーチェンナイ」(インド)の10路線。ハイパーループ・ワンによるとこれらの路線が実現することで53の都市部、6000キロ以上、そして1億4800万人がハイパーループにより繋がる、という。

 今後ハイパーループは計画を提出した母団体と協力し、あらゆるリソースを提供して路線実現に向けて動くことになる。ただしハイパーループ計画を持つのはこれら10地域だけではない。ハイパーループ・ワンではグローバル・チャレンジに先立ちすでにフィンランド、ドバイ、ロシア、ロサンゼルスで実際的な計画を進めてきた。それに対する世界の反応から、自主的にハイパーループを導入したいと考える自治体や地域を募集する考えに至った、という。

 ハイパーループ・ワンの経営陣にはXプライズ・ファンデーション(ロケット、無人飛行機、ソーラーカーなど様々なテーマで賞金をかけての世界的なコンペティションを開催する団体)のペーター・ディアマンディス氏が参画している。そのためグローバル・チャレンジのような企画が立てやすい環境にあったことも大きい。

 今回のグローバル・チャレンジの最大の成果として、ハイパーループ・ワンとコロラド州交通局(DOT)との正式提携が結ばれた点が挙げられる。コロラド州デンバーはパナソニックと提携したスマートシティ計画、全米の都市としては初めての「自動運転バスの公道走行許可」など、非常に先進的な政策をとっている。政府、民間との協力もスムーズで、おそらくハイパーループが実現するとすれば米国ではコロラド路線が最初の物になる、と期待がかかる。

 また、コロラドと同様に自動運転車両の導入に積極的なフロリダ州もマイアミ・デード郡のDOTが導入に非常に積極的だ。ラストベルト地域の代表とも言えるオハイオ路線はオハイオ中部地域計画委員会が中心となり、主に運輸を中心に据えたハイパーループによる経済の活性化を狙う。特にコロンバスは米国の物流センターが集まる場所で、シカゴやピッツバーグから20分で物資が輸送できればコロンバス国際空港から「その日のうちに日本にも輸出できる」という期待がある。

■世界中の都市が抱える交通渋滞

 米国、そして世界中の都市が抱える交通渋滞とそれに伴う生産性の低下という問題を解決するには、例えばテスラ社のイーロン・マスク氏が進めている「自動運転のトンネル走行」といった従来の考えを覆すアイデアが必要だ。元米運輸長官であるアンソニー・フォックス氏はグローバル・チャレンジの勝者発表に際し「世界中で既存の交通問題に対する新しい解答が求められている。ハイパーループ・ワンのグローバル・チャレンジはこの分野において最も大胆かつ斬新なアイデアを提唱し、それを国際化したものだ」とのコメントを寄せた。

 ハイパーループ・ワンでは2021年に最初の路線を実現させたい、としている。今後は建設にまつわる課題、ビジネスモデル、安全性など様々な問題をクリアする必要があるが、そう遠くない将来世界各地を走るハイパーループを目にする日が来るかもしれない。

配信2017年10月6日
ウェッジ
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10684

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