信州大学(本部・長野県松本市)が進める松食い虫被害の研究が、2019年末に打ち上げられる予定の宇宙航空研究開発機構(JAXAジャクサ)の先進光学衛星を使った委託研究に採用された。

同衛星に搭載された高性能センサーで松食い虫の被害区分を解析することで、精度は高まり、経費も大幅に削減される。同大では「県内、全国での調査を進めていきたい」と期待する。

 採用されたのは、同大山岳科学研究所の加藤正人教授(60)が開発した技術。目で見える赤色域と見えない近赤外線の間にある波長帯「レッドエッジ」を感知する高性能センサーを使って森林を撮影すると、マツの木一本ずつの健康状態を、「健全木」「感染木」(松枯れ病の可能性)「枯死木」(松枯れ病の被害)に識別できるという。

 同大は15年度から松本市と連携し、米国の民間商業衛星を使って被害状況を継続的に調査している。JAXAの先進光学衛星のセンサーを使うと、観測幅は商業衛星の十数キロから70キロに広がる。さらに80センチの幅まで、詳細に分析できる。

 経済的にもメリットは大きい。加藤教授は「民間では面積が広くなると経費がかさみ、調査依頼する自治体の負担も重い。JAXAの衛星は費用負担が少ない」と話す。

 一方、JAXAと信大との連携は既に行われている。7月には松本市の森林(約123平方キロ・メートル)と同県伊那市の森林(約100平方キロ・メートル)を米国の商業光学衛星が撮影したデータをJAXAが購入し、加藤教授側に提供した。今後、同県中野市の森林(約100平方キロ・メートル)についても進めるという。

http://yomiuri.co.jp/science/20171018-OYT1T50080.html