連続殺人犯(シリアルキラー)の胸中にしばしば性的な動機が潜んでいることはよく知られているが、
それだけで犯行に及ぶわけではない。世界的ベストセラー『アウトサイダー』で有名なイギリスの作家、
コリン・ウィルソンは、「セックスの充足」に加えて「自尊欲求の充足」を動機として挙げている。

 それでは、「自尊欲求」とは何かという話になるが、一言で言えば「コントロールへの欲求」である。
ウィルソンは、FBI(米連邦捜査局)行動科学部のロバート・R・ヘイゼルウッドの「性犯罪行為そのものは
セックス以外の欲求を満たすのだという事実です。それは権力欲求であり、憤慨欲求であり、
コントロールへの欲求なんです」という言葉を紹介している。
 つまり、被害者に対して支配力をふるい、
コントロールしたいからこそ犯行に及ぶわけで、ウィルソンは「強姦がからんでいても、
セックスが主目的ではなく、主目的はあくまでも自分が主人になったと感じることにある」と述べている。
 
被害者を強姦して殺害し、遺体を切断している瞬間だけは、自分が主人になったと感じられるがゆえに、
この感覚を少しでも持続させるために犯行を繰り返すのが連続殺人犯だ。だからこそ、ウィルソンは
連続殺人を「自尊犯罪」と呼んだのである。



 裏返せば、「これでもひとかどの人間なのだ」と感じる自尊心がそれだけ低いということになる。
自尊心を持てないからこそ、自尊欲求が生まれるのであり、当然こういうタイプは劣等感や不全感にさいなまれやすい。