船の横を通って佐世保港を航行する米海軍のLCAC=長崎県西海市で2017年11月7日午後4時55分
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米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)のエアクッション型揚陸艇(LCAC)が7日、佐世保湾の外海で夜間航行訓練を実施した。夜間航行は1995年の同基地配備以降初めて。LCACは2013年に佐世保市の崎辺海軍補助施設から同県西海市の横瀬駐機場に移駐したが、その際に九州防衛局は住民への騒音被害を考慮して夜間航行しないよう米軍と調整する旨の協定を市と結んでいる。協定違反の訓練強行に市は激しく反発している。

九州防衛局によると、訓練は7〜9日の3日間の予定。連日2、3隻のLCACが日没前に横瀬駐機場を出て、佐世保湾の外海で訓練して日没後に帰還する。7日は午後4時半ごろに2隻が駐機場を出て訓練に向かい、午後6時ごろに大きな音を立てて相次いで戻ったのが確認された。

 米海軍は10月30日、九州防衛局を通じて西海市と港湾管理者の佐世保市に訓練を通告した。しかし、LCACは騒音が大きく、駐機場を佐世保市から西海市へ移す際、西海市は夜間と早朝の運航禁止を定めた九州防衛局との協定などを条件に移駐を受け入れた経緯がある。西海市の杉沢泰彦市長は同31日、九州防衛局に「駐機場を受け入れた経緯からして夜間航行は断固受け入れられない」として協定順守を求める要請書を提出していた。

 九州防衛局も7日に米海軍佐世保基地に訓練中止を要請したが、「米海軍のハイレベルで決まったことでキャンセルは難しい」と断られており、改めて日本政府の当事者能力のなさを露呈した形だ。

 米海軍佐世保基地は毎日新聞の取材に「LCACは戦闘及び人道支援・災害救助活動においてなくてはならない。昼夜行われる作戦行動で安全かつ効率的に運用できるよう夜間訓練を行う必要がある」と説明している。

 運航ルートに近い同市西海町横瀬郷の山崎章さん(83)は「日中でも騒音がうるさく、ひどい時はテレビの音も聞こえない。夜間だとさらに迷惑で、漁船との衝突も起こりかねない」と怒りをあらわにした。【浅野孝仁】

 米軍監視団体「リムピース佐世保」の篠崎正人編集委員の話 米海軍は元々夜間航行訓練をしたかったのだろうが、緊迫する北朝鮮情勢に乗じて訓練すれば、世論の反発も少ないとみたのではないか。日本政府は一貫して米軍にものが言えない状況が続いている。

LCAC(エルキャック)

 ホーバークラフト型の高速水陸両用艇で最高時速は74キロ。1995年に佐世保市崎辺地区の米海軍施設に配備されたが、騒々しい工場並みの93デシベルを記録するなど騒音問題が深刻化し、国が総額約250億円の思いやり予算で西海市に横瀬駐機場を整備し、2013年3月に移駐した。14年に米軍側から夜間航行訓練をしたいと九州防衛局を通じて西海市に協議の申し入れがあった際は、市が協議を拒否して訓練は実施されなかった。

配信2017年11月7日 21時59分(最終更新 11月7日 23時39分)
毎日新聞
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