https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171125-00000007-mai-soci

 ◇大阪、広島、長崎の3地裁で遺族延べ600人と争う方針

 海外に住む被爆者らが「被爆者援護法の適用外とされたのは違法」として国に損害賠償を求めた集団訴訟で、国が昨年、和解に応じる姿勢を一転させ、大阪、広島、長崎の3地裁で遺族延べ約600人と争う方針を示したことが分かった。同種訴訟で、適用外を違法とする判決は2007年に確定しているが、国は被爆者の死後20年が経過し、民法で損害賠償の請求権が消える「除斥(じょせき)期間」に当たると主張。遺族側は「20年で国が賠償を免れるのは、著しく正義に反する」と反発しており、司法判断が注目される。

 被爆者は援護法に基づき、健康管理手当(月約3万4000円)などが国から支給される。しかし、厚生省(当時)は1974年の通達で「海外移住した場合は支給しない」とし、03年の通達廃止まで支給対象外だった。

 広島で被爆した韓国人40人が起こした訴訟で、最高裁は07年、「在外被爆者を適用外としたのは違法」と判断し、1人当たり120万円の賠償を国に命じる広島高裁判決が確定した。

 舛添要一厚生労働相(当時)は08年、「司法が判断すれば和解する」として在外被爆者への賠償を進める意向を表明。大阪など3地裁で提訴が相次ぎ、国は今年9月末までに延べ約6000人と和解した。ところが、国は昨年9月以降、係争中の延べ約930人のうち、被爆者の死後20年以上後に提訴した遺族約600人は請求権がないと主張。民法は、不法行為から20年たった場合、損害賠償請求権が消えると定めており、今回は国が援護法の適用外とした不法行為が被爆者の死亡により終了したと主張している。

 既に和解した遺族の中には、死後20年経過したケースも延べ175人分が含まれていたが、国は「除斥期間に気付いたのは昨春。指摘が遅れて申し訳ない」と釈明している。【原田啓之】

 ◇除斥期間

 権利が一定期間の経過で自動的に消滅するという法律上の考え方。民法は、不法行為が行われてから20年で、加害者に損害賠償を請求する権利が消滅すると定めている。損害や加害者を認識した時点から3年で権利が消滅する「消滅時効」と異なり、当事者の認識に関係なく期間が進行し、中断はない。今回の訴訟で国側は、在外被爆者を被爆者援護法の適用外としたことを不法行為と捉え、被爆者の死亡によって不法行為が終了したと指摘。死後20年が経過した場合は除斥期間が適用されると主張している。