http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42308531

ジョナサン・エイモスBBC科学担当記者(米ルイジアナ州ニューオーリンズ)

英国に新たな「最高峰」が誕生した。

南極で英国が領有を宣言している地域にあるホープ山の標高をあらためて計測したところ、3239メートルだと分かり、これまで最高峰とされてきたジャクソン山の3184メートルを55メートル上回った。

南極上空を飛ぶ飛行機の安全に懸念が生じていたことから、英国南極調査所(BAS)が今回再計測した。

BASのピーター・フレットウェル博士は、「南極には道がないので、移動には飛行機を使うが、飛行機を飛ばす時には、どこに山があって高さはどのくらいか、知っておかなくはいけない」と説明した。「(南極)大陸で起きた墜落事故の一部は、地図作成がまずかったことが原因ではないかと我々は考えている」。

BASの計測により、ホープが英領の新たな最高峰になっただけでなく、南極大陸の4分の1を占める英国領の起伏についてより完全な把握ができた。これには南米大陸に向かって北に伸びる細長い半島部分も含まれる。
計測の結果、最大5メートル「動いた」山も一部あった。南極の最高峰は依然として英領南極のすぐ外側にあるビンソン山で、標高は4892メートルと群を抜く。
フレットウェル博士のチームは調査からの報告を、今月11日の国連「国際山岳デー」に発表する予定。
標高データについては、ここ米ルイジアナ州ニューオーリンズで開催中の米地球物理学連合(AGU)秋季大会でも話題に上っている。AGUの秋季大会は地球・惑星学の研究者の集まりとして世界最大。

BASは衛星から得られたデータを基に作成された複数の標高モデルを組み合わせ、新たな計測値を出した。
中程度の解像度の写真からホープ山の標高が従来考えられていたよりも高い可能性が示唆されたことを受け、研究者たちはさらに、非常に高い解像度の写真を入手した。
米国の衛星「WorldView-2(ワールドビューツー)」が軌道上から撮影したこれらの写真は、ホープ、ジャクソン両山の形状を複数の角度から確認するのを可能にした。
「これを私たちは写真測量法と呼んでいる」とフレットウェル博士は話す。「なぜなら、我々は衛星の位置をよく知っているため、2つの別の位置から撮影した山の写真の非常に微妙な差異を基に三角法を使って標高の測定に使うことができる」。

結果として、ホープの標高はこれまで考えられていた2860メートルよりも高い3239メートルだと分かった。この想定方法の誤差はわずか5メートルのため、ホープが英領の最高峰だというのは間違いなさそうだ。
南極半島の背骨のように長く伸びる山脈は地球上の地形の中でも最もダイナミックな場所の一つ。
BASの地球物理学者、トム・ジョーダン博士によると、南極半島の山脈は5000万〜1億年前に海の下の構造プレートが南極大陸の下にもぐり込んだ際にできたという。「これが火山活動を生み、地殻を圧縮し厚くした。その後、より最近の時代になって、氷の層と氷河が岩を海に押し出し、南極半島に深い溝を作った」。

「この塊が取り除かれると、半島全体が跳ね返り、山脈の頂をかなり高く押し上げた」
AGU秋季大会では、米国の研究者たちが同じような取り組みを発表しているが、BASよりもずっと大規模なものだ。
米ミネソタ大学・極地研究所のポール・モーリン博士は、北極と南極両方の起伏を再計測した。
これらの研究プロジェクトはワールドビューが数年間にわたって撮影した画像を使用し、データ分析にはスーパーコンピューターを活用している。
北極のデータでは、地域全体にわたって2メートルごとに標高値が計測されており、来年初めに公開される予定の南極のデータではそれは8メートルごとになる。

モーリン博士はBBCの取材に対し、「データが入手可能になったことで、南極は世界で最も測量が貧弱だった場所から最も測量された場所の一つになった」と語った。「より良い科学研究がより安価で可能になり、目標到達までの時間も短くなる。何がどこにあるのかすべて分かるので、科学研究がずっと安全にもなる」。

英領サウスジョージア島のパジェット山(標高:2935メートル)は南極以外の英領で最も高い山

英国内の最高峰、ベン・ネビス山は高性能GPS(全地球測位システム)を使った再計測で標高が1345メートルだと分かった

(英語記事 Mt Hope installed as 'UK's highest peak')
2017/12/12