毎日新聞 2017年12月21日 大阪夕刊
https://mainichi.jp/articles/20171221/ddf/012/040/003000c?inb=ra

 モンゴルの首都ウランバートルから南東へ約450キロの草原に位置する「ドンゴイン・シレー遺跡」の発掘調査で、古代トルコの突厥(とっけつ)文字が刻まれた全長4〜6メートルの大型石碑14本が見つかった。8世紀の王侯の墓とみられるが、出土状況から石槨(せっかく)(埋葬施設)をストーンサークル状に囲む特異な構造をしていたことがわかった。

 モンゴル科学アカデミー歴史・考古学研究所と共同調査していた大澤孝・大阪大大学院教授(古代トルコ史)が発表した。突厥は6〜8世紀、モンゴル高原から中央アジアにかけての地域を支配したトルコ系遊牧民族。遺跡は中国からモンゴルへ抜ける街道筋にあり、長方形の周溝(長軸17メートル、短軸15メートル)で囲まれた空間に花こう岩の石碑が配列されていた。

 碑文には、行政と軍事の最高権力者「テリス・シャド(東方の王侯)」に任命されたとの記述があったほか、「トグズ・タタルを攻撃させた」など、死者の功績をたたえる言葉や忠誠を誓う文句が刻まれていた。また、タムガと呼ばれる支配下の氏族や部族を表す印章が約120個確認された。この人物が強大な権力を持っていたことや、遺跡周辺が突厥の東方支配の拠点だったことが読み取れるという。

 大澤教授は、遺跡の被葬者について、出土遺物の放射性炭素年代測定の分析結果や文献史料などから、741年ごろ亡くなったとされる王侯「バン・キョル・テギンの可能性が高い」としている。【林由紀子】

参考記事:
大阪大学、モンゴル東部で最大級かつ唯一の突厥碑文に囲まれた遺跡を発掘
http://univ-journal.jp/17342/