■根強い人気のタワマン

 超高層からの眺望。そしてホテルのような住空間や設備の数々。地方を中心に「空き家」の増加が問題となる中、都市部のタワマンは根強い人気を誇る。特に駅から近いタワマンは「資産価値が維持しやすく、値崩れしにくい」(不動産業界関係者)とされる。高層階の暮らしにあこがれる人も多いのではないか。

 同じタワマンでも何階に住むかによって所得の差があるとされ、「タワマン格差」などと、メディアでも頻繁にクローズアップされた。高層階の住民が低層階の住民に対して優越感を抱く様子を描いたドラマも放送された。

 このドラマに対しては、タワマンの住人から批判の声が上がったとも言われる。しかし、実際に日本有数のタワマン密集地として知られるJR・東急武蔵小杉駅周辺(川崎市)のタワマンに住む会社員の男性(40代)によれば、やはり「近所の人と話すとき、よく『何階に住んでいるの?』と聞かれる」そうだ。

■18年1月からの「タワマン節税」規制

 高層階の人気は「夢」や「見栄みえ」ばかりが理由ではない。富裕層にとって高層階を買うことは「節税対策」にもつながっていた。これまでのタワマンの固定資産税評価方式は、何階かには関係なく、専有面積によって決まる仕組みだった。

 高層階の価格は中・低層階の価格より高いのが一般的で、都市部のタワマンは同じ専有面積・方角でも、分譲価格は「1階違いで10万円以上の価格差になる」といわれる。しかし、実際の資産価値とは関係なく固定資産税額が決まり、相続税額にも影響する。富裕層の中には相続税の節税対策のための資産として高層階を求める向きもあった。「タワマン節税」と呼ぶ声もあった。

 ところが、17年の税制改正で、18年以降に引き渡される新築物件は「階層」による価値も評価対象になる。具体的には、中間階を起点に、階数が1階上下するごとに約0.25%ずつ税額が変動する。40階建てのマンションなら、最上階は現在よりも約5%の増税になる一方、1階は約5%減税になる。中間階は変わらない。これまでのような節税効果はもはや見込めなくなった。

 一方で、見直されているのが「中・低層階」のよさだ。

■あえて中・低層階を選ぶ理由

 一般的に、「タワマン」と呼ばれるのは高さ57メートル(20階前後)を超えるマンションだ。最上階が40階以上のものが多いが、現時点でもあえて中・低層階を選ぶ人がいる。その理由について、実際に住む人たちに尋ねてみた。

子育てのための「専用庭」

 1人目の子供が生まれてまもなく、東京湾岸部のタワーマンション(20階建て)の1階を購入したという女性(40)は、自分と夫の実家が同じくらいの距離にある物件を探していたと話す。

 「最初から1階が希望でした。専用庭があり、子供が庭で遊べれば子育てにもいいだろうと思っていました」と話す。

 建物が「ロの字」の形状で、低層階でも外部からのぞかれる心配がなかったことがポイントになったという。

>>2以降に続く

配信 2017年12月24日 07時00分
YOMIURI ONLINE
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