炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造を持つシート状の物質「グラフェン」は、ダイヤモンド以上に炭素同士の結合が強く、世界で最も引っ張りに強い物質であり、世界で最も熱伝導率が良い物質とされている。
そのグラフェンを応用し、「最強の防御」を得られるであろう素材が新たに開発された。

グラフェンを2層構造にした「ジアメン(diamene)」は、強い力が加わった時、と貫通不能なダイヤモンドプレートに変化するという。
薄い素材で軽量なのにこの防御力。防弾服に最適である。

■グラフェンとは?

まず、グラフェンをご存知ない方のために説明しよう。
蜂の巣状に並ぶ炭素原子で形成された平らな金網を想像してもらえばいい。

この配列にすると、各炭素原子の3つの電子が原子の手にかたく結びつき、1つは自由に動けるまま残ることから、炭素に素晴らしい特性をもらたす。
ルーズな電子という特性から伝導テクノロジーにも利用できるし、そのメカニカル特性を利用すれば狭いナノチューブを作り出すこともできる。
どちらもの場合も、グラフェンが平らな二次元構造であるゆえに可能になることだ。

image credit:グラフェンの分子構造モデル
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■グラフェンを二枚重ねることで、弾丸貫通不能な無敵の防御素材に

アメリカ・ニューヨーク市立大学先端科学研究センターの研究者は、グラフェン・シートを2枚重ねて、強い力で潰された時に三次元のダイヤモンド状構造に変化するようにした。
これは4つめの電子が固定されるとグラフェンがまた別の有名な炭素同素体、すなわちダイヤモンドに変化する性質を利用したものだ。

またシートの伝導性が急激に変化することで、いくつか面白い電気的特性が生じる。
だが、その応用としてまず考えられるのは軽量の保護材としてである。

■ダイヤモンドの硬さを持つ史上最薄のフィルム「ジアメン」

「ダイヤモンドの硬さを持つ史上最薄のフィルムです」と研究の中心人物エリサ・リード(Elisa Riedo)博士は話す。
「グラファイトやグラフェンの単原子層では、圧力を加えても柔らかく感じます。
すが2層にして圧力を加えると、素材が突然とんでもなく硬くなるんです。ダイヤモンド以上にね」

■不思議なことに3枚重ねると弱くなる

不思議なことに、層を3重にしてもシートは丈夫にならない。
この驚異の特性はグラフェンを2層にした時にのみ発揮されるのである。
 
「グラファイトもダイヤモンドもどちらも完全に炭素でできていますが、原子の配列は素材によって異なります。
このため硬度、柔軟性、伝導性に違いが現れるのです」と研究に携わったアンジェロ・ボンジョーノ(Angero Bongiorno)博士は説明する。
「新しい技法によってグラファイトを操作し、特定の条件ではダイヤモンドの特性を発揮させることが可能になりました」

■最強の防弾服としての未来

応用する方法については今後さらに考案されることだろうが、将来の科学技術ではその構造や伝導性がますます大きな役割を果たすようになることは想像に難くない。
いつの日か、警察官や兵士などがジアメンを使った防弾チョッキで身を守るようになるかもしれない。

宇宙を飛び回る小さな隕石から宇宙飛行士を守ってくれるかもしれない。
そして市販化されたら、忌まわしい銃乱射事件の被害者が減るかもしれない。
ついでにナイフなどの刃物からも守ってくれるとよいのだけれど、弾丸や隕石ほどの速さはないからどうなんだろう?

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