CESの基調講演でIntelがCPUの脆弱性対策について説明、過去5年の製品は月内に対応

CESの開幕日前日夕方に行なわれる基調講演(Kickoff Keynote)は、CESの基調講演のなかでも一番格式が高いものとされており、古くはMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏、Intelのクレイグ・バレット氏やポール・オッテリーニ氏などの歴代CEO、

そして昨年(2017年)はNVIDIA 創業者でCEOのジェンスン・フアン氏が務めるなど、IT業界の錚々たる面々が務めてきた晴れの舞台だ。

今年(2018年)その前日夕方の基調講演に登壇したのは、Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏。昨今業界を騒がしているプロセッサの脆弱性問題の状況を説明した。

クルザニッチ氏によれば、過去5年間にIntelが発売したCPUの90%は来週末までに対策が完了し、残りは月内に完了するとのこと。

その後、Intelが公式スポンサーになったオリンピックの中継をVRで行なうと発表したり、昨年Intelが買収した車載向けCV(Computer Vision)大手のMobileyeのCEOと一緒に自動運転への取り組みを説明したほか、

最後にはIntelブランドの小型ドローンを紹介し、室内で1台のコンピュータを利用して同時にドローンを飛ばした数のギネス記録を更新するなど、普段とはかなり趣が違った内容で、PCカンパニーから転進を遂げるIntelを印象づける内容となった。

また、クルザニッチ氏はIntelが開発している量子コンピュータ(Quantum Computing)向けのテストチップとなる「Tangle Lake」、脳型コンピュータ(Neuromorphic Computing)向けのテストチップとなる「Loihi」を公開し、

データオリエンテッドカンパニーを目指すIntelの方向性を指し示した。

過去5年間に出荷した製品に対しSpectre/Meltdown対策パッチを月内に提供

CESの前日基調講演と言えば、企業経営者にとっては晴れの舞台であって、あまり都合の悪いことは言いたくないはずだが、IntelのCEOたるブライアン・クルザニッチ氏は、一番冒頭に現在世のなかを騒がせているプロセッサの脆弱性問題について言及した。

クルザニッチ氏は「Intelにとってユーザーのセキュリティを守ることが最上位の仕事だ、まず顧客のデータを守ることがなによりも重要だと考えて行動している」と述べ、Intelがこの問題の解決し、

そしてなによりも顧客のデータの安全性を確保するために、全力で取り組んでいると説明した。

この脆弱性はGoogle Project Zeroチームが発見した、「Spectre」や「Meltdown」の通称で知られる問題で、現代のプロセッサの多くが採用している投機実行(命令をソフトウェアに書かれている順番で実行するのではなく、

後に影響が起こることを覚悟の上で投機的に実行する処理のこと)の脆弱性を利用すると、本来はソフトウェアが参照できないはずのメモリ空間を参照できてしまい、データの安全性が脅かされることがあるという問題だ。

この問題はIntelのプロセッサだけでなく、投機実行を行なうすべてのプロセッサで起こりうる問題で、IntelにかぎらずArmやAMDといった他社のプロセッサでも(脅威のレベルの違いはあるが)発生しうるとされている。

このため、Intelを含めた各プロセッサメーカーは対応を急いでおり、ファームウェアレベルやOSレベルでのパッチ提供が行なわれている。

クルザニッチ氏は「来週の終わりまでには過去5年間に発売したプロセッサの90%に対してアップデートを提供。そして今月中には残りも提供できるようにしたい。それに加え、OSベンダーやクラウドサービスプロバイダ、デバイスベンダーなどがアップデートを提供していく。

それらのアップデートを当てることで、コンシューマの使い方にはほとんど影響をおよぼさないと考えているが、いくつかの使い方に関しては当初大きな性能面へのインパクトがあるだろう。しかし、将来それらをより小さくするアップデートを提供していきたい」と述べた。

(全文)
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1100211.html

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https://wired.jp/2018/01/08/processor-vulnerability-fix/