無関心が危険を高めていないか
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 2014年に改正児童ポルノ禁止法が成立し、子供のわいせつな写真や画像などを所持していることも禁じられた。それから3年が過ぎ、児童ポルノの単純所持による逮捕者が相次いでいる。ライターの森鷹久氏が、児童ポルノの単純所持に対する危機感が薄い風潮への警鐘を鳴らす。

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 昨年5月、国内最大規模とも言われた「児童ポルノ販売サイト」が摘発されたことで、警察当局は約7000名にも及ぶ“顧客”の存在を突き止めた。その中には有名漫画家や警察官、警察職員や役人も名を連ねていた。その後、児童ポルノを購入する常連が書類送検されたり、依願退職が相次ぐなど、愛好家の間に衝撃が広がっているのだという。

「業者が逮捕される、というのは当然想定内。ヘビーな愛好家は偽名を使ったり連絡先を架空のものにしたり、送り先を“民泊”に指定するなどいろいろな手段で“児童ポルノ”を入手する。今回、顧客として当局にマークされた人々は、かなり昔からの“愛好家”であり、業者に対する信頼みたいなものがあったはずです」

 こう説明するのは、元アダルト雑誌の編集者・X氏だ。X氏は編集者時代、制服の若い女性や投稿された盗撮写真を多く掲載するアダルト誌を制作していた。いわゆる「ロリコン」や盗撮に興味を示す読者が多い環境の中で、彼らの動向をチェックしてきたが、児童ポルノのやりとりはすでに、よりアンダーグラウンドな空間の中で秘密裏に行われるようになったと話す。

「児童ポルノは“単純所持”でも摘発対象になりましたから、今回のように足がつくことを愛好家は最も恐れる。つい最近までは、ネット上のクラウドサービスを使ったやりとりが主流でした。鍵付きのフォルダに大量の児童ポルノを入れておき、入金してきたユーザーにそのパスワードを教える、という方法です。しかし、そのサービス業者へ警察からの“開示請求”があれば、アクセス解析で一発でバレる」

 児童ポルノの単純所持で摘発されると、当然自宅や職場に”ガサ”が入る。パソコンや携帯電話などが押収され解析されると、そこから遡って“クラウドサービス”を利用していたことがバレて、それこそ芋づる式の大量検挙につながるという。

「そこでTor(トーア)などの匿名化ソフトを使ったり、より限られたユーザーだけに解放したマストドンサーバーなどを用いてのやりとりが主流になりつつある」(前出の元編集者X氏)

 Torとは、接続経路を匿名化する技術や、それを使用したソフトウエアのこと。通常、ネットに接続すると、どこの国のどの街のどこから、どんな機械を使用して接続したのかが記録され、接続先にも通知される。ところがTorを利用すると、数千の中継地点を追加し目的地以外は匿名化されるため、発信源を特定することがほぼ不可能になる。何層にも重ねて暗号化され、中継地点をめくってもめくっても本体にたどりつけないことから「タマネギ」のニックネームで呼ばれることもある。

 このTorの仕組みは複雑だが、利用は難しくない。いずれにしても“足がつく”可能性が、従来より圧倒的に低いために、そこには過激で、より違法性の高い児童ポルノが堂々と掲載されていたり、ダウンロードできるようになってしまっているのだ。

「たとえ摘発されても、これは性癖の問題ですから、彼らは何度も何度も繰り返し児童ポルノを追い求める。薬物依存と同じ病気なんです。需要もあるから、供給する側も常に存在する」(前出の元編集者X氏)

 我が国では「児童ポルノ」に対する社会の関心が低いと言われている。児童ポルノの単純所持が「違法」であることについて、なぜ持っているだけで捕まるのか? などと、ネット上で議論が起こることもある。そこには被害者の声が聞こえないからという、加害者にとって実に身勝手な理由が透けて見える。

 当然だが、児童ポルノの被害者は児童である。子供が加害者にも聞こえるような方法で被害を訴えることは現実にはほぼない。まさに“声を上げない存在”だ。声を上げなければ被害者と見做されない風潮が蔓延すれば、児童ポルノ製作者、所有者たちの罪の意識が薄くなる。性犯罪に巻き込まれた女性に対しても、同じような理屈で被害があるという現実を見ない者が多すぎる。

 だが考えればすぐにわかるように、相手が声を上げないからといって一方的に攻撃し続ける、相手の人格が壊れるまで追い込むのは、卑劣この上なく、人間としての生き方を問われるようなおぞましい行為である。児童ポルノの被害者がこの先、どんな人生を歩むのか。誰でも簡単に想像がつくだろう。

続きはソース
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180110-00000010-pseven-soci