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 福井県坂井市の河川敷で見つかった遺体が、昨年12月から行方不明となっていた越前市下四目町の田中蓮ちゃん(3)と分かった20日、無事を信じて懸命に捜してきた父の了士さん(30)ら家族は悲しみに暮れた。

 行方不明の現場となった同市上太田町の川沿いには献花台が設けられ、蓮ちゃんの友だちや一緒に捜索した住民が次々と訪れては冥福めいふくを祈った。

 「坂井市の九頭竜川河口近くで、蓮ちゃんの可能性がある遺体が見つかった」

 祖父の康雄さん(54)によると、19日昼に福井県警越前署員が了士さん宅を訪れ、第一報を家族に伝えた。背格好など特徴が似ていることを告げられると、母親はその場で泣き崩れ、了士さんは放心状態だった。

 DNA鑑定で蓮ちゃんと断定された20日朝、了士さんと康雄さんは、越前署に安置されていた遺体と対面した。了士さんは泣きながら蓮ちゃんの手を握りしめ「ごめんな」と何度も謝った。康雄さんは洋服の上から体をさすって「よく海に出て行かずに頑張ったな」と声をかけた。海に流されて見つからなければ、ずっと家族を苦しめてしまう――。亡くなった蓮ちゃんが、最後の力を振り絞って川岸にとどまったのだと、康雄さんらは信じている。

 遺体の顔は隠されていたが、「寝ている時に、(寂しがって)すり寄ってくるいつもと同じ感覚があり、すぐに蓮とわかった」

 家族は蓮ちゃんの生存を信じて、情報提供を呼びかけてきた。配ったチラシは8万部に上り、ツイッターでの無事を願う投稿が、10万回以上、リツイート(転載)されたこともあった。了士さんは「私の不注意が招いたこと」と悔やみきれない心情を明かすとともに、「多くの人が捜索に協力してくれた。申し訳なく思うし、感謝したい」と話した。

 蓮ちゃんが行方不明となった越前市の駐車場。すぐ横を流れる川の土手には、近くの住民が手作りの献花台を設置した。すぐに花束や、蓮ちゃんが飲みやすいようにストローを差したジュースも供えられていった。

 蓮ちゃんと同じこども園に通う孫と一緒に訪れた同市平出、50歳代女性は「元気によく笑う子という印象だった。誘拐などで、どこかで生きているかもしれないと思っていただけに、胸が詰まる」と目に涙を浮かべた。行方不明から約1週間後、川を自主的に捜索したという同市広瀬町、自営業男性(65)は「私も30年ほど前に3歳手前の娘を病気で亡くしたので、人ごとではないと感じていた。家族のことを思うといたたまれない」と語った。(大川哲拓)

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