先物取引出来高・受け取り手数料・預かり賞金推移
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「リスクを知らされないまま投資させられ、多額の損失を被った」と顧客が訴えるなど、一部の業者による悪質な勧誘が社会問題化していた「商品先物取引」の市場が、ここ10年間で最大7分の1程度の規模まで落ち込んでいることが業界団体の統計で分かった。背景には、法規制の強化や業界への不信感・嫌悪感の高まり、外国為替証拠金取引(FX)や仮想通貨取引といった投資先の多様化があるとみられる。取材に応じた先物取引業界の元営業マンの30代男性は、かつて駆使した巧妙な営業ノウハウを明かした上で、「ブラック中のブラック業界だと思った。時代はずれで、凋落(ちょうらく)はある意味で必然だ」と振り返った。(社会部 小野田雄一)

■人間心理を利用−あえて損失も金銭欲刺激

 「利益が出ると顧客は証拠金(業者に預けている元手)を引き揚げてしまう。それを避けるため、むしろ顧客に損失を出させ、お金を取り返したいという心理につけこんで、“追(お)い証”(追加証拠金)をつぎ込ませるということが行われていた。営業方法も金銭欲を刺激するようマニュアル化されていた」

 約10年前に先物業界に就職し、数年間働いた30代男性は取材にそう明かした。

 「電話帳を見ながら1日700件ほど電話する。だいたい3、4件アポが取れる。アポを取って訪問した相手には『このとき買っておけば、これだけもうかった』などと金銭欲を刺激する。迷う顧客には(信用があると受け止められる)上司と電話をつないで説得する。『貴金属と穀物、どちらが良いですか』と2択を提示することで“取引しない”という選択肢を選ばせない。そうした心理学を活用した営業手法がマニュアル化されていた」

 相手からは「そんなにおいしい話なら、なぜ自分でやらないのか」といぶかしがられることも多かったというが、その際は「自分でも当然もうけている」「営業マンは取引ができない」「皆さんが馬券を買う人なら、私はジョッキーになりたい」−などと答えていたという。

 男性は「個人的には、顧客に損失を与えても動じない“機械”のような人間しか続けられないブラック中のブラック業界だった。市場縮小は、顧客を無視して自らの利益のみを追求した結果で、当然ではないか」と切り捨てた。

■各種指標が急速悪化−ネットで悪評広まる

 実際、先物取引市場は急速に凋落している。

 業界団体「日本商品先物振興協会」の統計によると、先物取引の出来高は、平成15年が1億5410万枚(枚=先物取引の単位)▽18年は9270万枚▽28年は2740万枚−へと減少。証拠金の預かり額も、16年が5100億円▽18年は3971億円▽28年は1198億円(各年3月時点)−へと落ち込んだ。

 業者が顧客から受け取った手数料額の場合はさらに顕著で、15年度は3470億円▽18年度は1590億円▽27年度は230億円−と、約10年間で7分の1規模にまで減少した。

 先物取引市場が苦境に立った背景としては、インターネットの発達による悪評・リスクの周知▽株の信用取引やFXなど投資先の多様化▽業者からの電話や訪問勧誘などを禁じた「商品先物取引法」の制定(21年成立、23年完全施行)−などがあるとみられている。

 元営業マンの男性は「この10年で、(かつては情報にうとかった)年配者もネットを使うようになり、先物取引業界の悪評が知れ渡って、契約を取りにくくなった。以前は顧客との関係は“信頼”から始まったが、いつしか“疑念”が先に立つようになった。このように市場環境が激変しているのに業界は成功体験にとらわれ、従来の営業手法を変えられなかったことも、業界凋落の一因だろう」と分析した。

■浄化進む市場−苦情や相談も激減

 ただ、経済産業省の担当者が「資源のない日本がエネルギーや物資を安定確保するために重要だ」と話すように、先物取引市場は産業インフラとして機能する側面を持つのも事実だ。

 また、先物取引をめぐる苦情や相談も減っている。

 警視庁は現在もホームページで悪質な先物業者への注意を呼びかけているが、担当者は「通報は“全盛期”から圧倒的に減っている」と話す。

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配信2018.1.27 17:00
産経ニュース
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