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2月5日 19時05分
「指導死」−−−教員の不適切な指導が原因で子どもが自殺に追い込まれることを言います。去年、福井県で起きた中学生の自殺をきっかけに注目が集まりました。対策を求める声が高まる中、子どもを亡くした保護者と、指導していた生徒を自殺で失った教師からそれぞれの思いを聞きました。絶対にあってはならない「指導死」を防ぐにはどのような対策が求められるのでしょうか?
(福井放送局記者 影山遙平)

行き過ぎた指導に追い詰められた男子生徒

「彼を苦しめ、傷つけ、追い詰めてしまった」

去年10月、福井県池田町にある中学校の当時の校長が記者会見で語った言葉です。この中学校ではその7か月前に、中学2年生の男子生徒が校舎から飛び降り、自殺しました。なぜ、自殺したのか。

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町の教育委員会が設置した第三者委員会がまとめた調査報告書は全国に衝撃を与えました。自殺の原因が、教員から繰り返し受けた、厳しい指導や叱責だったとわかったためです。いわゆる「指導死」でした。

生徒会活動に参加し真面目で優しい性格だったという男子生徒。調査報告書から見えてきたのは厳しい指導の実態です。男子生徒は行事の準備が遅れた際に、担任から校門の前で大声でどなられていました。周りの人まで身震いするほどの声だったといいます。また、副担任に宿題の遅れを叱責されたとき、男子生徒は土下座しようとするほど、追い詰められていました。

男子生徒の母親は、調査報告書の公表に合わせて、中学校の教員や保護者に宛てた手記のなかで「罵倒するような発言、人権を侵害するような発言も、多々あったと聞いています。『教員による陰険なイジメ』で、息子は尊い命を失ったのだと感じています」と苦しい思いを記しています。

自殺した人は去年までに8年連続で減少していますが、年代別では10代以下の子どもの自殺だけが各年代の中で唯一、増加しています。警察庁によると、「教師との人間関係」が原因で自殺した子どもは、おととしまでの10年間で全国で37人にのぼっています。

表面化しにくい“指導死”

しかし、その原因が詳しく調査され、学校の責任や再発防止の対策がとられるケースは一部に過ぎないという指摘もあります。

「指導死」への対策を呼びかけている、遺族で作る「『指導死』親の会」で代表をつとめる大貫隆志さんは中学2年生だった息子、陵平さんを17年前に自殺で失いました。

学校でお菓子を食べたという理由で、立ったまま1時間半に及ぶ指導を受けた翌日のことでした。

「その瞬間は『まさか』ということだけでしかないですね。立っていられなくなってへたり込んだ、それだけ覚えています。だからショックはもっともっと後になってからきました」

自殺直後、大貫さんは行き過ぎた指導が息子を追い詰めたのではないかと考えました。しかし、指導の詳しい状況について、学校から情報は得られず、原因を明らかにすることはできませんでした。

その時に味わった親としての苦しい思いから、大貫さんは平成20年に「『指導死』親の会」を結成し、専門家とともに多くの事例を調べてきました。その中でわかってきたのは「指導死」は表面化しにくい、ということでした。

「多くの場合、生徒への指導は、いろいろな配慮から教員と生徒という形になっていて、ほかの人の目に触れないところで行います。子どもが命を失うと、何が本当かということはわからなくなってしまうんです」
(リンク先に続きあり)

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