http://www3.nhk.or.jp/news/html/20180206/k10011316551000.html

5日、佐賀県神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターが住宅に墜落して炎上し、隊員1人が死亡するなどした事故で、事故機が離陸から2分後に管制官と交信した際には異常はなかったことが防衛省の調べでわかりました。防衛省はその後の墜落までの5分間に突然トラブルが起きた可能性があると見て原因を調べています。

5日午後4時40分すぎ、陸上自衛隊のAH64戦闘ヘリコプター1機が神埼市の住宅に墜落し、この住宅1棟が全焼したほか隣接する住宅の一部が焼けました。

ヘリコプターに乗っていた隊員2人のうち、副操縦士の高山啓希1等陸曹(26)が死亡したほか、全焼した住宅に住む小学5年生の女の子がひざを打つけがをしました。

また、ヘリコプターの機長の齊藤謙一2等陸佐(43)の行方がわからなくなっていて、警察と自衛隊はけさ7時半から捜索を再開することにしています。

防衛省によりますと、事故機は定期整備後の試験飛行のため、佐賀県吉野ヶ里町にある陸上自衛隊目達原駐屯地を午後4時36分に離陸し、その後、福岡県久留米市などの上空を飛行する予定でしたが、離陸から7分後の午後4時43分に墜落しました。

防衛省のその後の調べで、事故機が離陸から2分後の午後4時38分に、当時の飛行位置について目達原駐屯地の管制官と交信した際には、異常はなかったことがわかりました。

また、その後、目視していた管制官が機体がバランスを崩しているのに気づき、パイロットに呼びかけたものの返事はなかったということです。

このため防衛省は最後の交信から墜落までの5分間に突然トラブルが起きた可能性があると見て原因を調べています。

「AH64」とは

「AH64」は、アメリカのボーイング社が開発した戦車などを相手とする高性能の戦闘ヘリコプターで、平成17年度から自衛隊に導入されています。全長およそ18メートルの2人乗りの機体で、30ミリ機関砲や70ミリロケット弾、それに対戦車ミサイルなどを装備しています。

最大時速は270キロと高速で飛行できるほか、航続距離はおよそ200キロで、ヘリコプターどうしでデータをやり取りする通信機器や高性能レーダーなどの電子機器が強化されているのが特徴です。

政務官が謝罪に訪れる

大野防衛政務官は、5日夜11時半ごろ、炎上した住宅に住んでいた家族のもとを訪れ、けがをした小学生の女の子の父親に謝罪しました。

このあと墜落現場を視察し、記者団に対し、「大変なことを起こしてしまい申し訳ありませんと謝罪しました。二度とこうした事故が起きないよう努めないといけない」と述べました。

事故機に微量の放射性物質 防衛省「健康に影響無し」

防衛省によりますと、今回、墜落した陸上自衛隊のヘリコプターには、3つの装置に微量の放射性物質が使われているということです。

具体的には、エンジンの点火装置と、機体の先頭部分にある種類の違う2つの暗視装置にそれぞれ使われているということです。

防衛省は「放射性物質は微量で、健康に影響はないと考えられるものの、念のため現場や周辺の数値を測定する」としています。

過去の自衛隊機事故

自衛隊機の墜落で民間の住宅などに被害が出たのは、49年前の昭和44年に石川県の航空自衛隊小松基地に所属する戦闘機が、飛行中に雷にあたって金沢市の住宅地に墜落した事故があります。

パイロットは緊急脱出しましたが、複数の住宅が焼け、住民4人が死亡しました。

また、19年前の平成11年には、航空自衛隊の練習機がエンジントラブルのため埼玉県狭山市の河川敷に墜落し、乗員2人が死亡したほか、墜落の際に送電線が切断されて東京と埼玉の合わせておよそ80万世帯が停電しました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20180206/K10011316551_1802060424_1802060427_01_02.jpg