カレーの街・神保町の老舗行列店が閉店騒動!? 突如、SNS上に拡散した“悲報”の真相
[2018年02月09日]

“カレーの聖地”神保町がザワついている。カレー通の人なら絶句し青ざめたかもしれない。2月6日午後8時頃、ツイッター上に突如、こんな情報が投稿されたのだ。

【悲報】神保町のキッチン南海が立ち退きに

『キッチン南海』といえば、カレーの名店がひしめく神保町にあって連日行列ができる超人気店。デミグラスソースのような黒っぽいルウが食欲をかきたてる『カツカレー』(750円)は店の名物であり、神保町の“ソウルフード”ともいえる定番メニューだ。

この投稿をたどると、『キッチン南海』が立ち退きになるという情報を流したのは神保町である店を営む男性と思われる。立ち退きの理由については『一帯がまとめて再開発されるから(近辺の事情通による)』とツイートしていた。

当然、【悲報】は瞬(またた)く間にツイッター上で拡散されることとなった。

「うそだー! 信じたくない」「悲しー(涙)」「カツカレー美味しかったのに!」「神保町に行く理由がなくなった…」

続々と寄せられたリツイートは1日で3千件近くにまでなり、閉店を惜しむ声が大半だった。

とはいえ、立ち退きを知らせるツイートには閉店案内の張り紙などの証拠画像はなく、ネット検索しても閉店に関する情報は他に1件もヒットしなかった。店からの公式発表もない。そんな不確かな【悲報】が信憑性のある情報として受け止められたのには、まずこんな伏線があった…。

実は、『キッチン南海』の北隣にあるおにぎり店と、真裏にある定食店が昨年12月末に相次いで閉店。中でも、昭和20年から神保町を見守り続けてきたというおにぎり店・店主が筆字で書いた閉店案内の張り紙の画像がネットで拡散。
『神保町で骨をうずめたいと思っておりましたが、事情が許さず…』『涙で文字がにじんでしまい…わかってください』といった約500字に及ぶ文面は話題になり、多くのツイッターユーザーが『キッチン南海の隣のおにぎり屋が…』という書き出しでこの情報を伝えた。

かくして、神保町内の再開発の影響で老舗の店が続々と立ち退きに追い込まれ、「次はいよいよキッチン南海も…」と多くの人に受け止められたというわけだ。

何を隠そう、記者も月2で通う『キッチン南海』の常連のひとり。はたして、この情報は本当なのか? 事実だったとして閉店時期はいつになるのだろう。もしや、すでに…?

第一報が流された翌日(2月7日)の夜、店へと向かった。店前に着くと、明かりのある店内ではサラリーマン数名がカウンター席でカレーを食べていた。まだ営業していたことにホッとしつつも、「これで最後…」かもしれないカレーを頬張る客の背中がどこか寂しげに映った。

夜8時の閉店を外で待っていると、会社の同僚らしい中年男性とOLが立ち止まり、店を指さして言葉を交わした。「ココ閉店になるって」「ホントに?」「ツイッターに上がってた」「淋しいなぁ。あと何回食べられるんだろ」「明日、ランチに来よっか…」。

ツイッターの拡散力に驚くとともに、中年男性の声が頭の中でリピート再生された――「あと、何回食べられるんだろ」。1日2食をキッチン南海で、なんて日もあったが、安くてうまいあの“庶民派カレー”が食べられなくなると思うとやっぱり淋しくなる…。

http://wpb.shueisha.co.jp/2018/02/09/99455/