栃木の県民性は「控えめ」とよく言われる。イチゴ生産量が50年連続1位にもかかわらず、あまりアピールしてこなかった。絶対王者ゆえの余裕なのか−。そんな栃木県が1月15日、ついに重い腰を上げた。「いちご王国・栃木の日」を宣言、県を挙げたPRに乗り出した。

 記念セレモニーは、赤いガウンをまとった福田富一知事が“国王”として登場し、イチゴバルーンが飛び交うなど華やかな式典となった。福田知事は「イチゴは県の顔で、将来にわたって引き継ぐべき宝だ」と高らかに宣言。バレンタインデーの2月14日まで1カ月かけ、県内のアウトレットでの出店や首都圏を中心にしたフェアなど、県内外で集中的にプロモーションを展開する。

 栃木県産イチゴには、主力の「とちおとめ」、贈答用の「スカイベリー」、夏イチゴの「なつおとめ」などがある。「あまおう」を擁する福岡県と比べると、平成28年の栃木県イチゴ生産量は2万5100トン。2位の福岡県1万5600トンを圧倒、都道府県別で49年連続日本一。JAとちぎによると、29年販売実績も福岡県を大きく引き離し、50年連続1位が確実な状況だ。

 ただ、圧倒的な生産量の割に、イメージでは福岡県などにつけいる隙を与えているようだ。その背景には消費地の問題もある。栃木県産イチゴの大半は東京などの首都圏や東北地方に出荷される。県担当者は「日本一の消費地である首都圏で間に合っており、関西圏など西日本にまで出回っていない」と明かす。手に取り、口にする人が限られていれば、全国的な知名度は浸透しにくい。

 イチゴは他の農産物と比べて日持ちしないため、流通コストを考えると全国規模で展開するメリットに乏しい点もある。そうなると、消費拡大のための大々的なPRの必要性も薄れ、全国1位を掲げる機運も醸成されにくかったのかもしれない。

 ただ、今年は4〜6月、JRグループの大型誘客事業「デスティネーションキャンペーン」が19年ぶりに栃木県を対象にする。この機会に満を持して県産イチゴをPRし、県のブランド力向上にも結びつけたい考えだ。県担当者は「これまで品種開発のたびにPRしてきたが、イチゴそのものは初めて。50年の節目というのが大きい」。遅まきながら、50年分の思いを込めて「いちご王国」が巻き返しを図る。 (宇都宮支局 楠城泰介)

 白いイチゴも登場 栃木県産イチゴとして、白いイチゴ「栃木iW1号」が開発され、1月26日に品種登録出願、新たなラインアップに加わる。これまでの赤いイチゴに合わせ、紅白でお祝い事にも使えることから、PRの選択肢が広がる。新品種の登録出願はスカイベリー以来6年ぶりで、いちご王国の新戦力として期待される。

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