今国会での裁量労働制の対象拡大を断念し、不安要因を摘み取ったはずの安倍政権に新たな懸案が浮上した。朝日新聞の報道をきっかけに、2日の参院予算委員会では学校法人「森友学園」問題が再燃。財務省が国有地売却に関する決裁文書を書き換えたのではないかという野党の追及に、麻生太郎副総理兼財務相らは防戦に追われた。

 共産党の小池晃書記局長は参院予算委で、決裁文書の原本を国会に提出するよう要求。麻生氏や財務省の太田充理財局長は「捜査への影響」を盾に応じず、審議は7回中断した。小池氏は「改ざんしていないとなぜ言えないのか」「語るに落ちた。結局、(元の文書の存在を)認めている」と攻め立てた。

 立憲民主党の福山哲郎幹事長に対しても太田氏は同様の答弁に終始。野党の質問が報道ベースにとどまっているとみた麻生氏は「仮定の質問には答えかねる」と反論した。

 森友問題を巡っては、「安倍晋三記念小学校」と報じた朝日新聞を首相が国会で繰り返し批判するなど、政権を挙げて火消しに躍起になっていた。参院予算委前には、麻生氏が記者会見で「捜査に協力しないという印象には書くなよ。あんたらの書き方は信用できないから」と同紙をけん制する場面もあった。

 太田氏は2日の衆院財務金融委員会で、財務省が昨年2月の問題発覚後に国会に開示した文書について「近畿財務局管財部で把握、整理し、保存しているもの」と説明。財務省本省は関与していないというニュアンスをにじませた。

 しかし、共産党の宮本徹氏から「本省はいつ入手したのか」と問われると、「明確に覚えているわけではない」とかわした。森友問題は簡単に幕引きとはなりそうにない。

 希望の党と民進党は2日、財務省へのヒアリングを実施。同日中に立憲、共産、社民、自由4党も加わった合同会合に拡大した。労働時間に関する厚生労働省の異常データ問題に続く疑惑で、野党の結束は強まっている。

 佐川宣寿前理財局長は昨年の国会で交渉記録を「廃棄した」と説明していたが、財務省は今年2月、新文書20件を公表し、整合性が問われている。この日、安倍晋三首相は決裁文書に関して一切答弁しなかったが、財務省の改ざんが事実なら、政権のダメージは極めて大きい。

 首相官邸幹部は「少し言葉を書き換えた程度の話だ。大したことはない」と語る。一方、立憲民主党の枝野幸男代表は「相当な疑いがあると言わざるを得ない。事実関係をできるだけ早く明確にしていきたい」と引き続き追及する考えを示した。【野口武則、樋口淳也】

ソース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180302-00000083-mai-pol