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2018年3月15日 15:21 発信地:ダマスカス/シリア
【3月15日 AFP】シリアの首都ダマスカスにあるダマスカス大学(Damascus University)に通うヌールさん(30)は、結婚指輪がはまっていない薬指を物憂げに眺めてから、周りのクラスメートたちに視線を移した。そこにいるのは見渡す限り、女性ばかり。結婚相手にふさわしい独身男性は一人もいない。

 ヌールさんは結婚したくてたまらない──しかし長引く内戦のために、花婿候補たちは国を離れたり、軍に加わったり、命を落としたりしていなくなっていった。「いつかこの指に結婚指輪をはめられたらいいんだけど」とヌールさんは言う。「でも、ここにはもう若い男性がいない。何年も前にみんないなくなった。年々少なくなっていったわ」

 シリアでは2011年3月、反政府デモを発端として内戦が勃発した。ヌールさんはその頃、経済学の学位を取得して卒業しようとしていた。当時は毎週のように男性からプロポーズを受けていたという。「だけど今はもうプロポーズされることなんてほとんどない。プロポーズしてくるのは普通の結婚には向かない人たちだけ──既婚者とか老人とか!」

 時間つぶしのためにヌールさんは2つ目の学位を目指し、ダマスカス大学で文学を学ぶことにした。「時間を持て余しているの。友達も、恋人も、夫もいないから」と言ってため息をつくと、ヌールさんは顔にかかったブロンドに染めた髪を払った。「結婚前に白髪が出てきたらどうしようとびくびくしてる。そうなったら完全にお先真っ暗ね」

 概して保守的なシリア社会において、女性は一般的に20代のうちに結婚するものとされている。しかし、花婿となるにふさわしい男性が不足しているために、こうした規範は幾分緩んできている。

 ダマスカス大のサラム・カシム(Salam Qassem)教授(心理学)は「内戦のために、今では女性は32歳になっても遅すぎると言われることなく結婚できる」と話す。

■「婚期」を逃す

 シリア内戦では34万人以上が死亡し、また大勢の男性が家から遠く離れた戦場に送られている。また内戦勃発前には2300万人いた人口のうち500万人以上が国外に避難し、それよりもはるかに多くの人々が国内で避難生活を送っている。

 カシム教授によると、かつては両親が息子や娘の配偶者候補を見つけていたが、内戦によってこうした社会的なつながりも失われてしまったという。

 シリア人の中には「スカイプ(Skype)婚」というクリエーティブな方法でこうした障害をくぐり抜けようとしている人たちもいる。スカイプ婚では異なる県、異なる国の花嫁と花婿がオンラインで誓いを交わし、委任した第三者に婚姻届に署名してもらう。

 ユスラさん(31)は、自分がまだ結婚していないために両親が「婚期を逃してしまうのではないか」と心配していると語る。母親には「あなたに行き遅れになって欲しくないの」「周りをよく見て、いい人を見つけなさい」と口酸っぱく言われている。

 しかしヌールさん同様、政府の翻訳者として働くユスラさんの職場も女性ばかりで、男性は結婚を考えられないほど年上しかいないという。

 すらりとした長身のユスラさんは「誰もが知っているように、シリアの若者の大部分が今起きていることの莫大な代償を払っている」とAFPに語った。そして悲しげに「国を離れた人もいれば、戦っている人もいる。経済的な理由から結婚なんて考えられない人もいる──それに言うまでもなく、この7年間に亡くなった人もいる」と語った。

 ユスラさんによると、さらに内戦によって「社会の中で宗派間の亀裂が広がった」ことで、異なる宗教的背景を持つカップルの結婚が少なくなっているという。
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