【ブリュッセル八田浩輔】オランダで2月、臓器の摘出を望まないと意思表示した人を除き全ての18歳以上の成人を臓器提供者(ドナー)として登録する新法が成立し、2020年にも施行される見通しとなった。慢性的な臓器不足を背景に、欧州では本人が提供拒否の意思表示をしない限り、臓器を摘出してもいいとみなす方式を導入する傾向が強まっている。

 オランダの新制度では、外国人を含め住民登録する18歳以上の成人には、提供の意思を尋ねる手紙が2度送付され、返答がない場合でも自動的にドナー(提供者)として登録される。ただし、最終的に家族が提供を拒否できるという条件は付けた。世界保健機関(WHO)が協力する「贈与と移植の国際観察機関」(GODT)のデータベースによると、オランダの人口100万人あたりのドナー数は14.7人(16年)で欧州全体の平均(15.7人)より少なく、制度改正には提供数を増やす意図がある。

 腎臓病患者を支援するオランダ腎臓財団は「移植臓器を待つ患者にとって飛躍的な進展だ」と歓迎。ドナー側も自動登録で意思が明示されることにより、突然判断を迫られる残された家族にとっても利点となるとの見方を示した。

 細かな運用方法は国ごとに違うが、類似の方式は、欧州ではスペイン、フランス、ベルギー、イタリア、ギリシャ、英国の一部など多くの国と地域が既に採用している。中でもスペインのドナー数は同43.8人と多く、欧州平均を上回る国が多い。しかし、ドナー数は文化的な背景や医療体制にも影響されるため、ギリシャのように同4.6人と伸び悩む国もある。

 一方、日本はオランダと異なり、本人が生前に書面で臓器を提供する意思を表示するか、本人の意思が不明でも、家族が承諾すれば臓器提供できる方式だ。近年、提供数は増え、年100件程度で推移している。だが、人口100万人当たりのドナー数は0.76人(16年)で、欧州平均の20分の1にすぎない。

 ドナー不足が著しい日本だが、現時点で欧州と類似の方式を導入する動きはない。大阪大病院移植医療部顧問の高原史郎教授は「日本も将来的には選択する可能性があるが、国民の臓器提供の意思が完全にはかなえられていない現状がある。まずは移植に携わる医師らを増やすなど病院の提供体制の充実が求められる」と指摘する。【渡辺諒】

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