◆日本人が知らない航空機電動化という新潮流

北欧のノルウェーが、2017年にある快挙をやってのけた。
電気自動車(EV)とハイブリッド車の合計販売台数が、新車登録全体の50%超に達したのだ。
EVのみでは約21%であり、日米中英仏などの1%前後とは彼我の差だ。

『週刊東洋経済』は3月26日発売号(3月31日号)で「電力激変」を特集。
デジタル技術の革新と投資マネーに支えられた再生可能エネルギーの大量導入が、世界のエネルギー産業を変える動きを追っている。

■ノルウェーは国内電力の98%を水力発電で賄う

ノルウェーは、雪と雨による豊富な水と、フィヨルドの地形を生かし、国内電力の約98%を水力発電が賄う。
つまり、各国が四苦八苦している発電での脱炭素化はほぼ実現済み。
パリ協定(温暖化対策の国際枠組み)は今世紀後半に世界全体で実質的なCO2排出をゼロにする「カーボンニュートラル」の達成を目指すが、ノルウェー政府の目標時期はなんと2030年だ。

発電部門での脱炭素化をほぼ終えているノルウェーにとって、目下の課題は輸送部門でのCO2削減だ。
EVに続けとばかり、ある輸送部門の電動化計画が今年1月に発表された。
ノルウェーを飛び交う航空機である。

公表したのは、ノルウェー国内45空港を運営する国有企業アビノール。
そのCEO(最高経営責任者)、ダグ・ファルクペテルセン氏はノルウェー空軍でF16戦闘機の、スカンジナビア航空(SAS)でボーイング767の操縦桿をそれぞれ握ったパイロット。

現在もプライベート機の操縦資格を持つヒコーキ野郎だ。そのファルクペテルセン氏は「2040年までに国内路線のすべてを電気航空機にする」と自信たっぷりに語る。
アビノールが初オーダーした電気航空機が、スロベニアのピピストレル社製「アルファ・エレクトロG2」だ。

写真:ピピストレル社製「アルファ・エレクトロG2」
http://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/0/900ae_1635_16f5b790ed7c875bc252666fd519862f.jpg

2人乗り、約1時間の満充電で航続距離は約130キロメートル。
今年4〜6月期に納入され、テスト飛行する予定だ。
「重量制限は1人80キログラムで、人によってはダイエットが必要だ」とファルクペテルセン氏は笑う。

ただ、同機はデモンストレーションの側面が強く、同社によると、より重要な航空機は別にあるという。
欧エアバス製(独シーメンス、英ロールス・ロイスとの共同開発)と、ボーイングが出資するスタートアップ企業ズナムエアロ製だ。

写真:エアバス(左)とズナムエアロのハイブリッド電気航空機
http://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/5/6/560ce_1635_6753e1287268cd9d0882806ec312709a.jpg

両社の特徴は、12〜19座席程度の短距離用ハイブリッド電気航空機を開発することだ。
「200〜300キロメートルなら純粋な電気駆動が可能。

発電機でバッテリーにチャージすれば、1000キロメートル程度に航続距離を延ばせる。
2025年までには商業航路でのテスト飛行を始める予定だ」(ファルクペテルセン氏)。

さらに、2030年までに初の電気航空機の商業航路を開設し、先述のように2040年までにすべての国内線を電化する計画である。
バッテリーが重いため、電気航空機は短距離から始めざるをえない。

その点、アビノールは有利だ。
日本と同程度の国土面積であるノルウェーは、ほとんどが短距離路線だからだ。

道路や鉄道の発達が遅れ、人口の3分の2が空港まで1時間以内の場所に住む。
ノルウェー西部、北部に至っては人口の3分の2が空港の30分圏内に住んでいる。
26空港は短距離用滑走路しか持たず、電気飛行の範囲に収まる40〜170キロメートルの国内路線が40以上もあるという。

東洋経済オンライン 2018年3月26日 6時0分
http://news.livedoor.com/article/detail/14484353/

※続きます