東急電鉄で「青ガエル」の愛称で親しまれ、熊本で現役生活を終えた古い車両の保存に、ネットで資金を募る「クラウドファンディング」(CF)が一役買った。経営が厳しい地方の鉄道も全国から維持費などを集められるCFが、各地で「鉄道遺産」を守る新たな手段になっている。

 2月10日、熊本電鉄の北熊本駅に男女14人が集まった。お目当ては、ぷくっとふくれた外観が目を引く古い車両で、熊本電鉄で2年前まで走った東急の初代5000系だ。

 この日、車両は塗装の塗り直し中で、集まったのはCFでその費用を出資した人たち。出資の「返礼」の見学ツアーだ。数年前、熊本に青ガエルに乗りに来た東京都の女性(49)は「青ガエルを残せるなら、と出資した。CFは参加しやすい」。

 青ガエルは100両以上がつくられ、1954年から東急の主力車両として活躍。東急で引退した86年以降は中古車として各地の私鉄に活躍の場を移した。熊電は全国でも最後の現役車両だったが、2016年2月に営業運転を終え、解体予定だった。

 そこに、惜しむ声を上げたのが鉄道ファンだった。熊本在住のファンが集まる「鉄道創研」事務局の斉場俊之(44)が、熊電に持ちかけた。「車体を保存できないか」

 熊電の運輸課長の中野育生(52)は当初、「費用もかかるし、動かせる状態での保存は難しい」と考え、他の場所での展示など静態保存の協議を進めた。だが「ラストラン」を控えた姿がテレビで放映されると、首都圏などから問い合わせが殺到。駅のホームは、最後の雄姿を撮影するファンであふれた。

 その様子を目にし、「移動手段が鉄道中心の都会はファン層の厚さ、熱量が圧倒的に違うな」と感じた中野。30年以上も赤字の鉄道事業にとって「またとない集客手段になる」と考え直し、保存を決めた。ファンが全面協力し、モーターなどのメンテナンスを熊電が担い、塗装修復の費用はCFを通じてファン側が負担することになった。

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