多くの路線バスが運行する広島市中心部の過密ダイヤを解消するため、5月13日から中心部を周回する新路線「都心循環線」が導入されることが決まった。

 新線を柱とした公共交通の再編実施計画が、28日付で国土交通相の認定を受けた。重複する便を調整することで事業者は効率的な経営が図れるほか、近距離間の利用者からは利便性の向上への期待の声が上がっている。

 都心循環線は、広島電鉄と広島バスの2社が運行し、乗り場やダイヤ、運賃を共通化する。JR広島駅を出発点に、右回りと左回り、市役所急行の3路線で運行。右回りは「稲荷町」や「本通り」、「紙屋町」、「八丁堀」などを走行し、左回りは「八丁堀」側から逆回りを進む。運行区間は4・8キロで、1日70〜76便運行し、いずれも約30分程度で同駅に戻ってくる。平日の朝と夕方のラッシュ時には4〜10分間隔で、それ以外の時間は10分間隔で運行。土曜と休日は日中が10〜12分間隔、夜間は24分間隔で走る。

 広島駅から「稲荷町」や「中電前」などを通って、「市役所前」に向かう市役所急行便(2・7キロ)は、平日の朝夕のみの上下28便の運行。運賃は3路線ともに均一で大人180円、小学生90円。

 広島市内では12社が路線バス事業を展開。需要の高い市内中心部には、市北部や市南部などから多数の路線バスが流れ込む。最も運行本数が多い相生通りの「紙屋町―八丁堀間」では1日に約3700便が通行するなど飽和状態で、非効率な運行や交通渋滞につながっている。

 市は交通事業者、住民代表と協議し、2月に再編実施計画を策定した。都市部の短区間だけを利用する乗客を専用路線に振り分け、周辺部とを行き来する路線との役割分担を図るのが狙いだ。

 同計画は、利用者減少などでバス路線の維持が困難な地域の支援を目的とした認定が多く、100万人規模の都市では初めてという。

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 事業者や利用者からも新線への期待は高い。県バス協会の西川雅己専務理事は「人口が減少する中、10年、20年先にも路線バスを維持するためには便数の適正化は不可欠だ。市民から選ばれる公共交通機関になるように利便性の向上に努めていく」と語る。

 仕事や買い物でほぼ毎日バスを利用するという広島市中区、鉄工所経営の男性(83)は「中心部で乗り降りするので利用したい。待ち時間がわかりやすいのもありがたい」と話す。

 市は今後の課題として、郊外の北部や西部から乗り入れているバスについて、途中で乗り換えを実施し、都市部を運行するバスを集約化することや、広島港と他の交通拠点を結ぶ路線の新設などを挙げている。

 広島工業大の伊藤雅教授(交通計画)は「利用客が集中してガラガラの便も出ている現状の改善が期待できる。バスを乗り換えても追加料金が発生しない共通運賃を各社が導入するなど、環境整備を進められれば、公共交通の利用促進につながるだろう」と指摘する。(守川雄一郎)

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