国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開催中の特別展で、北米の少数民族側からの要請を受け、一部展示物を非公開とする措置が取られていることが31日、分かった。宗教儀礼的にふさわしくないとして事実上の抗議を受け、民博は、文化的配慮から公開を見送ったという。こうした例は世界的にも増えているとされ、今後の民族文化の継承などに影響を与えそうだ。

 特別展は3月8日から開催されている「太陽の塔からみんぱくへ 70年万博収集資料」。昭和45年の大阪万博開催に向け、万博収集団が集めた神像や仮面など約2500点を展示するなどしている。

 その中で、展示が見送られたのは、米アリゾナ州の先住民族「ホピ」に伝わる「カチーナ神像」と呼ばれる木彫像(約30センチ)。頭部に羽根飾りがあしらわれた白く着色された木像で、万博時には太陽の塔内部で展示されていた。

 民博によると、作成過程などの詳細は不明だが、平成26年から民博が実施している各民族に収蔵資料を確認してもらう取り組みの中で、ホピ族からカチーナ像の非公開を求められたという。

 ホピ族は、カチーナは自然現象や動植物などの精霊で、宗教儀礼で重要な役割を担う。特に高位の像にあたる今回の像については「(多くの)人々の目に触れてはいけない神聖なものだ」などと説明したという。これを受け、民博は非公開を決定。カチーナ像の説明札だけを残して展示場所を空きスペースにする措置を取った。

 民博は、カチーナ像の類似品の制作も文化の冒涜(ぼうとく)とみなされるなどとする注意書きも掲示。ホピ族の人々に敬意を払うよう促した。「説明札そのものも撤去する案もあったが、来館者に異文化への配慮の必要性を知ってもらいたく残す選択を取った」としている。

 神像は現在、民博の収蔵庫に保管され、ホピ族から公開を認められない限り、一般公開は控えるという。

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