「実際に運賃が上がるかどうかは今後を見るしかないが、とりあえずは取引先の荷主や運送の同業者すべてに申し入れた」と岡山市の中堅事業者。同じく市内でトラック運送事業を手掛ける70歳代の社長も「燃料のように常に上下するコストとは違い、いまクローズアップされているのは上昇しかない人件費の問題。サーチャージなどどうでもいい…そう頭を切り替えないと先はない」と言い切る。働き方改革に沿った時短を実現する難しさがトラック運送事業の共通課題だが、一方ではドライバー離れによるトラック供給力の低下を感じ取る荷主も見られ、「このタイミングしかない」と運賃交渉に動き出すトラック事業者が目立ってきた。

 「いわれるままの立場、荷主に付いていくしかない商売…そんな我々が主体性を持つ絶好機だ」と兵庫県姫路市の老舗事業者。昨年11月に施行した改正運送約款について「形式的で意味は薄いという声もあるが、運賃と待機・作業料金を区別して収受する仕組みを生かすか否かは経営者の意識にかかっている」と指摘し、「うちの会社では大型トラックの場合、走行距離1`b換算の運賃単価が250円を下回るような仕事は断るように現場へ指示している」と説明する。

 広島市の湾岸地区に拠点を構える運送会社によれば「働き方改革で時間を縮める流れを踏まえて昨年、ドライバーらの基本給を1万5000円前後アップし、平均で16万円を少し上回るレベルに引き上げた」(社長)という。人件費の時間単価が上昇したことで引き下がれない状況を自ら作り、「これまでのような残業(待機)には応じられないこと、それが無理ならドライバーとは別に作業専従者を追加して別料金を請求しなければならなくなること…そんな事情を荷主の担当者に説明しているところ」と明かす。

 一方、同市南部でトラック事業を営む60代後半の2代目社長は「少子高齢化でこの先、物量自体が減っていくのは間違いない。そうした時代で運送の仕事を続けていくには、従来の『積んだ荷物量』『走った距離』ではなく、かかった時間に見合う作業(手間)料として運賃をもらう必要がある」と訴える。同社では原則として「173時間×最低賃金(広島県は818円)」に割り増し分も含めた残業代を加えた計算式でドライバーらの給料を計算し、それに基づいて運賃を弾き出しているという。

 数社の大手荷主と取引する岡山市の運送会社。社長は「かつて25日だった稼働が、いまは週休2日で月間20日。以前のように土曜日の積み込みにも応じてもらえず、結果として金曜日に積み込み、月曜日に届けるという非効率な形になってしまう」と厳しい現場の様子を説明する。

 「例えば、トラックを7時間運転して、その前後に2時間ずつの作業があったとして計11時間。一般道路の平均時速が40`bとすれば、1日に走れる距離は300`bに満たない。そんな現実を踏まえると、燃料サーチャージなど放っておいて、人件費に意識を集中することが必要だ」と主張する。同社では対策として現在、「待機時間料とは別に、最低でも運賃を10%引き上げてもらわないと『いまのサービスレベルを維持できない』と交渉している」という。

2018年4月2日
物流ウィークリー
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