http://www.bbc.com/japanese/43651158

2018/04/05
米トランプ政権は4日、米軍のシリア駐留を当面継続すると表明した。ドナルド・トランプ大統領は先週、「シリアからすぐに撤退する」と述べていたが、政府高官によると、国家安全保障チームから方針転換するよう説得されたという。

国家安全保障チームはトランプ大統領に対し、撤退すれば過激派組織「イスラム国」(IS)が再び勢力を回復する危険を生じさせると助言したという。

ホワイトハウスは4日の声明で、米軍のシリアにおける任務は「終了目前」にあると述べたが、完全な撤退時期については明らかにしなかった。

声明は、ISがほぼ完全に崩壊したとし、米国は今後の計画について同盟先と相談すると述べた。
米NBCニュースによると、米政府高官は、トランプ氏が国家安全保障チームとの会議で、米軍を期限を設定せずにシリアに駐留させることに合意したものの、「控え目に言っても喜んではいなかった」と明かした。

米軍は現在、シリア東部に約2000人を駐留させており、クルド人とアラブ人が参加するシリア民主軍(SDF)を支援している。
米国主導の有志連合による空爆支援を受けたSDFの戦闘員たちは、過去3年間で何万平方キロにもわたる地域でISを掃討している。

4日には、トルコとイラン、ロシアの首脳がトルコの首都アンカラで会談を行い、シリア安定化に向けた努力を加速化させることで合意した。
支援先は違うものの、3カ国ともシリア内戦に深くかかわってきた。イランとロシアはシリアのバッシャール・アサド大統領を支援し、トルコは反体制派を後押ししている。

しかしBBCのマーク・ローウェン・トルコ特派員は、3カ国の首脳は反米で一致しており、シリア情勢でカードを握っているのは自分たちだと考えていると指摘する。
イランのジャバド・ザリフ外相はBBCアラビア語に対し、米国はそもそもシリアに関与するという「間違った決断」をして分裂を引き起こし、「さまざまな民族の間の断層に付け込んだ」と語った。

トランプ氏はなぜ撤退を望んでいたのか

トランプ大統領は先週、中西部オハイオ州で行った演説で、シリアに最後に残ったISの支配地域は「すぐに」奪還されると述べた。

トランプ氏は、「もうほかの人たちにまかせればいい。すぐに、すぐにね、我々は撤退する」、「自分たちはこの国に戻る。自分たちの本来の場所に」と語った。
報道によると、トランプ大統領はレックス・ティラーソン前国務長官が拠出を約束していたシリア再建資金2億ドル(約215億円)の凍結を国務省に命じた。

国家安全保障チームはなぜ駐留継続を主張しているのか

対IS有志連合の関係者は、ISがシリアとイラクで一時支配していた地域の98%が奪還済みだとしつつも、完全には掃討されていないと強調する。

シリア東部のユーフラテス川が流れる谷にISの支配地域が残っているが、クルド人戦闘員たちがトルコ軍と戦うため北西部のアフリンに移動したため、SDFの作戦は2カ月間にわたって停滞している。
対IS有志連合で調整役を務めるブレット・マガーク米大統領特使は、「我々はアイシス(ISの別称)と戦うためシリアにいる。それが我々の任務で、任務は終わっていないし、我々はその任務を完遂する」と述べた。

米中央軍司令部のジョセフ・ボテル将軍は3日の記者会見で、「大変な局面はまだこれからだと思う。各地の安定化を図り、支配奪還を確実なものにし、住民が帰還できるようにして、復興という長期的な課題に取り組むほか、必要なことは色々ある」と語った。
ティラーソン前長官は今年1月、無期限のシリア駐留を表明し、ISの「永続的な敗北」を確実にするだけでなく、イランの影響力に対抗し、7年にわたる内戦を終わらせる必要があると述べていた。
ティラーソン氏は、時期尚早だった2011年のイラク撤退によって、イラクのアルカイダが生き延び、その後(ISに)姿を変えたような、「同じ失敗を繰り返す」わけにはいかないと警告した。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 Syria war: Trump 'persuaded not to pull out immediately')

4月2日時点での各勢力の支配地域、薄紫がシリア・クルド人勢力、オレンジがIS、緑がシリア政権、濃紫がシリア反体制勢力、薄緑がイラク政府(IHSコンフリクト・モニター調べ)
https://ichef-1.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/11273/production/_100695207_iraq_syria_control_02_04_2018_640_map-nc.png