【ワシントン=黒瀬悦成】米ジョンズ・ホプキンズ大高等国際問題研究大学院(SAIS)の傘下にあり、北朝鮮分析サイト「38ノース」を運営する「米韓研究所」(USKI)が5月11日に閉鎖されることが決まった。研究所に資金提供をしていた韓国政府系研究機関「対外経済政策研究院」(KIEP)が提供停止を決めたことを受けた措置。研究所の理事長を務めるロバート・ガルーチ氏は米紙ワシントン・ポストに対し、韓国政府による研究所人事への介入を拒絶したところ閉鎖を告げられたと説明し、「極めて不適切な行為だ」と強く反発している。

 USKIは、朝鮮半島問題に特化した、ワシントン市内でほぼ唯一の研究機関で、2006年に同紙元記者のドン・オーバードーファー氏が設立。「38ノース」は、商業衛星画像などを使って北朝鮮の核開発や人権侵害の実態を暴いてきた。同サイトによると、研究所閉鎖後も他から資金提供を得て活動を継続する。

 USKIはこれまで、KIEPから年間約1900万ドル(約20億円)の資金提供を受けてきたが、昨年、韓国で文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生後、革新系の国会議員などの間で「研究所の運営が不透明」などとする批判が激化。昨年9月に代表に就任したガルーチ氏は内部監査を行い、「問題なし」と結論づけたものの、韓国政府関係者から研究所の役員2人を解任するよう、文書と口頭で圧力をかけられたとしている。

 役員のうち1人は保守的な政治思想の持ち主とされ、もう1人は38ノースの編集責任者を務めている。

 ガルーチ氏はかつて国務省高官として1994年の米朝枠組み合意の交渉代表を務めた。

 北朝鮮の核問題をめぐる交渉機運が高まる中での今回の決定についてガルーチ氏は同紙に対し「すさまじく愚かだ」と非難した。

https://www.sankei.com/smp/world/news/180412/wor1804120030-s1.html