https://jp.reuters.com/article/germany-usa-trade-idJPKBN1IC0SI

2018年5月14日 / 00:59 / 7時間前更新
Paul Carrel and Michael Nienaber

[ベルリン 4日 ロイター] - ドイツは欧州最大の対米輸出国であり、100万人以上の国内雇用が対米輸出に依存している。それだけにドイツは、欧州連合(EU)と米国による貿易戦争を回避しようと躍起になっている。

トランプ米大統領が決定を下したEUからの鉄鋼とアルミ二ウム製品に対する関税措置の発動期限である6月1日が迫る中で、ドイツ政府はEU加盟国に対し、ある程度柔軟な姿勢を示すよう、また米国と欧州双方に利益のある広範囲の貿易協定を推進するよう呼びかけている。

だがこれにより、フランスなど域内の盟邦との関係がギクシャクしている。ドイツとともに欧州統合における車の両輪を担うフランス政府は、ドイツの巨額貿易黒字に不快感を示しており、米国の関税導入に対してEUがより強硬な姿勢を取ることを望んでいる。

だが、ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)のビングマン会長は、「そのような(強硬)姿勢では、貿易戦争に突入する危険が大きい」と、懸念を隠さない。

ドイツ国内で100万人以上の雇用が対米輸出に依存していることを示す在米ドイツ商工会議所のデータを念頭に、ビングマン会長は、対抗関税措置をちらつかせるEUの姿勢に警鐘を鳴らした。「そんな方法では、欧州が保護貿易主義者の理屈を支持する羽目に陥る」

欧州委員会は、欧州が輸出する64億ユーロ(約8350億円)に上る金属製品が米関税の対象とされる場合、ピーナッツバターやジーンズを含めた28億ユーロ相当の米国からの輸出品に関税をかけると警告した。

ドイツ政府は、工業製品を中心に幅広い製品にわたって関税を引き下げる協定を締結するという案を推進している。

「改めて交渉することは可能だ。ただし、すべての産業に対する関税について協議すべきだ」とドイツ政府高官は言う。

フランス政府当局者は、まず、鉄鋼・アルミ関税に関してEUを恒久的かつ無条件で対象外としなければならないと述べ、「それが他のすべての選択肢にとっての前提条件となる」と断言する。

こうした立場の違いはEU諸国を分断し、トランプ大統領と交渉するEUの立場を弱めかねない。そうなれば、米国企業の競争力をグローバル規模で高めようとするトランプ氏の術中にはまることになる。

ドイツのアルトマイヤー経済相は2日、フランスと共通の立場を見出すことと、米国に対する提案を策定することは、「同じように難しい」と述べた。

これまでのところ、EUは「米国政府はEUを鉄鋼・アルミ関税の対象から恒久的に除外すべき」という立場をとっており、ドイツとフランスの立場の違いはその背後に隠されている。

だが、6月1日の期限が近づく中、EU各国の通商担当大臣は早急に互いの立場の違いを解消し、米政権との交渉に向けて、マルムストローム欧州委員(貿易担当)に明確な権限を与えなければならない。
(リンク先に続きあり)